クルミなどのナッツ(木の実)類に対するアレルギーは一般的で、多くの場合重度の症状を示します。これらのタイプのアレルギーは通常2歳までに発症し、アレルギーを起こすナッツ類の数は、年齢とともに増加することがあります1。ナッツ類のアレルギーを持つ人の約30%は、複数のナッツに対するアレルギーを持っています。また、ピーナッツは実際にはマメ科植物ですが、ピーナッツアレルギーを持つ人の約20~30%は、1種類以上のナッツ(木の実)にアレルギーを持っています2。実際、ピーナッツとナッツ(木の実)類を合わせると、報告されている食物関連のアナフィラキシー死亡者の70~90%を占めています。ナッツアレルギーの有病率は年齢、地域、および診断に使用される定義によって異なりますが、人口の0.05~7.3 %に影響を及ぼしているようです。また、残念ながら、他の食物アレルギーと比較して、これらのアレルギーを克服できる可能性は低く、感作された人の約10%に限られています1。日本では、ナッツ類は食物アレルギーの原因として1,2歳で第3位、3~6歳では第1位を占めます。クルミはアナフィラキシーショックの原因食物として第4位(8.0%)と報告されています9。また、クルミは食品表示法の特定原材料としてものとして表示義務化の方針が決定されています(2022年9月時点)。
ナッツ類アレルギーの大半は、クルミ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、ペカンナッツ、ヘーゼルナッツ(ハシバミ)、マカダミアナッツ、ブラジルナッツ、松の実の9種類に起因します1。オメガ3を豊富に含むクルミは、実際には種子であり、タンパク質、脂肪、抗酸化物質、ビタミン、ミネラルを含有します3。
クルミは生のままでも食べられ、ペーストとしても使われることがありますが、ヨーグルト、ピザ、ケーキ、サラダ、ビスケット、アイスクリーム、その他のデザートにも使われます。特に中東の国々では、クルミにナツメヤシ、ブドウ、アーモンドなどを混ぜてマムールと呼ばれるケーキが作られています3。
次の食品には、ナッツ類や種子が含まれている場合があります4。焼き菓子、ベーキングミックス、バーベキューソース、ペストソース(具材をすりつぶしてペースト状にしたソース)、シリアル、チョコレート、プラリネ、クラッカー、ドレッシング、グレービー、フレーバーコーヒー、冷凍デザート、ミューズリー、ヌガー、アーモンドチキン、パッタイ、チリアーモンド、マスのアーモンド焼き、ジャンドゥーヤ(ヘーゼルナッツ入りチョコレート)、マジパン(アーモンドペースト)、アーモンドミルク、ナッツミルク、ナッツオイル、スプレッド(チーズスプレッド、ヘーゼルナッツを含むヌテラなどのチョコレートナッツスプレッドなど)、ベジタリアン料理、インドカレー、アジア料理、パスタ、リキュール(アマレットやフランジェリコなど)、天然香料および抽出物(アーモンド抽出液など)、サラダ、トレイルミックス、スナック食品など
また、「天然フレーバー」や「植物由来」という言葉は、ナッツやナッツの香料が入っていることを示している可能性があります5。アジア料理のレストランでは料理にナッツや種子を使用することが多いため、特に問題となる場合があります。また、鍋は複数の食事の調理に使用される可能性があるため、混入のリスクをはらんでいます7。
食品以外でナッツ類を含む可能性があるものには、次のものがあります4:ビーンバッグ(布地の中に穀物や粒を詰めたもの。お手玉やクッションとして使用されている)、鳥のエサ、化粧品、ヘアケア製品、日焼け止め、マッサージオイル、ペットフードなど
クルミアレルギーを持つ人の中には、無関係に見える他の食物を食べたときに症状を発症する人もいます。これは交差反応と呼ばれ、身体の免疫系が異なる物質中のタンパク質や成分を構造的に類似しているか生物学的に関連していると判断し、反応を引き起こすときに発生します。クルミとの交差反応をもっとも起こしやすいのは、ナッツ類、果物、大豆、野菜、マメ科植物などの植物性食物です。
クルミとペカンナッツには類似したアレルギー誘発性タンパク質があるため、クルミに反応する人はペカンナッツにも反応する場合があり、その逆も同様です4。
クルミやその他の関連する生の果物、生野菜、ナッツ類を食べた後に、口や耳のかゆみ、喉のイガイガ、口のじんましん、唇、口、舌、喉の腫れが見られる場合は、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)(口腔アレルギー症候群(OAS)とも呼ばれる)に罹患している可能性があります。このような症状は、食物や花粉に含まれる類似のタンパク質や成分に対する免疫系の反応によって引き起こされます6 。これはきわめて一般的で、ある研究は、アレルギー性鼻炎(花粉症)を持つ小児の最大25%がPFASにも罹患していることが示唆されています8。クルミを食べたときにOASを引き起こす可能性のある一般的な花粉アレルギーには、樹木(ブナ目カバノキ科花粉など)、イネ科植物、雑草などがあります4。
※他に感作または交差反応を起こしうるアレルゲンは人により異なるため、自己判断せずに必ず医師の診断を受けることが必要です。
クルミはさまざまな種類のタンパク質で構成されています。すべてのタンパク質に異なる特性があり、症状を引き起こすリスクレベルも異なります。原因となるタンパク質が高温によって分解される場合には、よく加熱(調理/ロースト)されたクルミなら食べられる人もいます。原因となるタンパク質が熱に対して安定する場合にはしており、アナフィラキシーとも呼ばれる重篤な症状を引き起こす可能性があるため、クルミを完全に避ける必要があります。個人個人のリスクプロファイルは、クルミに含まれるどのタンパク質(アレルゲンコンポーネント)に対してアレルギーがあるかによって異なります4。
ナッツ類アレルギーの症状は、通常は摂取後数分以内に起こり、じんましんからアナフィラキシーまでのさまざまな症状が現れます。アナフィラキシーは生命を脅かす可能性のある反応で、呼吸困難になり、身体がショック状態にいたることがあります2,5。実際、ナッツ類アレルギーは、アナフィラキシーの症例の18~40%を占めています。多くの人がナッツ類を正しく認識できないため、この重症度は特に問題となります。たとえば、ある研究では、アレルギーのあるナッツのすべての形態を正しく特定できたのは、ナッツ類アレルギーを持つ参加者の半数のみでした1。
ナッツ類アレルギーの症状には、以下のものがあります5。
また、ナッツ類によるアレルギー反応は、ブナ目カバノキ科花粉との交差反応により、口腔アレルギー症候群(OAS)(花粉-食物症候群(PFS)や花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)とも呼ばれる)として現れることもあります2,6。
OASの症状には以下のものがあります6。
症状の記録とともに、特異的IgE血液検査または皮膚プリックテストが役立ちます。アレルギーと診断された場合は、担当医があなたと相談して管理プランを作成します。