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はじめに
イオンクロマトグラフィー(IC)は、液体クロマトグラフィー(LC)の一種で主に溶液中のイオン性成分の定性・定量を行う分析手法です。ICは電解質水溶液を移動相に用いてイオン性成分を分離します。
ICの溶離液は、通常、陰イオン分析の場合は水酸化ナトリウムのような強塩基、陽イオン分析ではメタンスルホン酸のような強酸です。サプレッサーは、これらの強酸または強塩基溶離剤を水に変換することが可能です。強酸または強塩基性の液体は質量分析計(MS)に直接導入できませんが、サプレッサーが装備されているICシステムは、装置の変更をすることなく質量分析計との接続が容易に行えます。
イオンクロマトグラフィー(IC)とは
イオン交換体を充填したカラムを用いて分離を行い、電気伝導度検出器で目的分析種の導電率を測定するのがイオンクロマトグラフィーです。導電率を測定するときにサプレッサーを使用することで、溶離液のバックグラウンド伝導度を低下させ、イオン性物質を感度よく検出できます。電気伝導度検出器は選択性がなく、検出されたイオン性成分の保持時間によって同定されます。
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初心者必見!イオンクロマトグラフィーの基礎知識
イオンクロマトグラフィーは、液体クロマトグラフィーの一種であるイオンクロマトグラフを用いて、主に溶液中のイオン性成分の定性・定量を行う分析手法です。今回は、これまでイオンクロマトグラフィーにまったく接する機会がなかった方にもわかりやすく、イオンクロマトグラフィーの基礎をご紹介します。
質量分析計(MS)とは
MSは、イオンの質量電荷数比(m/z)を測定して、サンプルの定性や定量が行えます。MSは、水や土壌中の汚染物質、医薬品の代謝物、食品中の残留農薬、プロテオミクスなど幅広い分析に使用されています。
すべてのMSには、イオン源、質量分離部、および検出部があります。MSのタイプは、サンプルの性質や目的に応じて選択します。サンプルは通常、気体または液体の状態で質量分析計に注入され、気体であればEIやCl、液体であればAPCIなどのイオン化法によって、イオン源でイオン化されます。
生成されたイオンは電磁気学的に質量分離部に導入され、個々の質量ごとに分離されます。質量分離部には四重極、飛行時間(TOF)、Orbitrap、イオントラップなどがあり、それぞれに特長があるため、目的によって選択します。すべての質量分離部に共通する特長として、非常に高い選択性があげられます。イオン化された化合物を固有の質量で分離、検出できるので、複数の化合物が共溶出していた場合であっても、個々に検出できます。
今回は、多種ある質量分析計の中からシングル四重極質量分析計を用いた例を示します。
イオンクロマトグラフ-質量分析計(IC-MS)システムの四つの利点
低分子化合物の一斉測定が可能
IC-MSシステムでは電気伝導度検出器(CD)と質量分析計(MS)の二つの検出器で一度に測定ができます。化合物によってはMSを用いることでCDより高感度に検出ができる成分もあります。
イオン交換による迅速分離が可能
MSのフロントにICを置くことで、マトリックスイオンと測定目的イオンの分離を行うことができ、MSイオン化部でのイオン化の阻害を防ぐことができます。また、多くのイオン成分において、前処理が不要で、ICの部分は新たにメソッドを作成する必要がありません。
化合物の同定・定性能力が向上
MSを用いることで化合物の質量情報が取得できるため、IC単体での測定と比較して、測定したい化合物の同定・定性能力が向上します。
強酸/強塩基の溶離液が使用可能
溶離液から導電性イオンを除去し、バックグラウンドのシグナルやノイズを低減しながら分析物のシグナルを増強するサプレッサーを用いることで、強酸/強塩基の溶離液が使用可能となり、MSシグナルを安定化できます。さらにICとMSの簡単な接続を実現できます。
イオンクロマトグラフ-質量分析計(IC-MS) システムの配管
図3にIC-MS システム配管の一例を示します。IC用の検出器である電気伝導度検出器(CD)の後ろにMSを接続し、インターフェイスの汚染を防ぐためにも流路切り換えバルブを取り付け、目的イオン成分以外は排液とします。また、MSのイオン化が水100%では起こりにくいため、アセトニトリルなどの溶媒をポストカラムに添加して、イオン化を促進するためのメイクアップポンプを設置する必要があります。
CDクロマトグラムとSIMクロマトグラムの比較
電気伝導度検出器(CD)で得られたCDクロマトグラムとシングル四重極質量分析計(Thermo Scientific™ MSQ Plus™)で得られたSelected Ion Monitoring (SIM)クロマトグラムを比較表示します(図4)。下段のCDクロマトグラムではピークが重なっているため、成分の判別ができませんが、SIMクロマトグラムでは成分のm/zごとに単一のクロマトグラムを抽出できているため成分の判別および定量できます。

図4 電気伝導度検出器(CD)で得られたCDクロマトグラムと質量分析計で得られたSIM クロマトグラムの⽐較
サンプル: 無電解ニッケルめっき液 カラム:Thermo Scientific Dionex IonPac™ AG11-HC(2 × 50 mm) 、Thermo Scientific Dionex IonPac AS11-HC(2 × 250 mm) 、溶離液(EG):0.5〜33 mmol/L KOH、流量:0.4 mL/min、サプレッサー:Thermo Scientific Dionex AERS 500 (エクスターナルモード)、検出器:ISQ EC、MS条件:イオン化法: ESI Negative、ソース電圧: -3000V、ソース温度: Vaporizer 427 ºC、Ion Transfer 300 ºC
N2ガス (psi): Sheath 72.9、Aux 6.8、Sweep 0.0 注⼊量:10 μL
まとめ
ICはサプレッサーを用いることで、溶離液を水に変化させるため、直接MSに接続が可能です。
MSをICと併用することで、各ピークの質量情報を取得できます。このため電気伝導度検出器(CD)だけでは難しかった物質の定性を行うことができます。
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