サンガーシーケンス法では、PCR増幅の設計を含めて、より良いプライマーのデザインが目的領域の増幅やその後のシーケンスの成功に欠かせません。そこで今回は、プライマーを設計する際のポイントや便利なツールについて、ご紹介します。
▼こんな方におすすめです!
・サンガーシーケンスでプライマーデザインにお困りの方
・これからサンガーシーケンスプライマーをデザインされる方
・サンガーシーケンスでシグナル強度にお困りの方
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サンガーシーケンスワークフローにおけるプライマーの位置づけ
サンガーシーケンスのワークフローは大きく二つに分類できます。1つはゲノムDNAを鋳型とする場合で、PCR法を用いて目的領域を増幅し、次にシーケンス反応を実行する必要があります。もう1つのプラスミドDNAを鋳型に用いる場合は、シーケンス反応を実行するだけで済みます。
ゲノムDNAを鋳型としてシーケンスする場合について整理すると、PCR反応には増幅する配列の領域を決定する順方向と逆方向の2つのプライマーが必要です。しかし、シーケンス反応には1本のプライマーのみが反応に使用されるという点がPCR反応とは異なります。つまり、一般的には特定のPCR産物に対して、2つのサンガーシーケンス反応が設定されます。2つの反応とは、1つは順方向のシーケンス用、もう1つは逆方向のシーケンス用を示します。このようにサンガーシーケンス法は、両方向から解析をすることで精度の高い配列決定が期待できます。
プライマーデザインは、基本的なPCR、シーケンスだけでなく、フラグメント解析や、定量分析など、さまざまな実験系に関わる重要なポイントです。
Applied Biosystems™ BigDye™ TerminatorシリーズのCycle Sequencing Kitでは、PCR反応に用いたプライマーをシーケンス反応にも流用することができるため、プライマーデザインの重要性が高くなります。
プライマーデザインのポイントと有用なツールのご紹介
プライマーを設計する際に考慮するポイントはいくつかあります。
・プライマーの長さは18〜22塩基程度でデザインします。
・プライマーのGC含量は50%から55%になるようにします。
・プライマーの3 ‘末端の最後の1塩基もしくは2塩基をGかCにします(GCロック)。
・プライマーの融解温度は、50℃から55℃位になるようにします。
・同一塩基が連続する領域を避けてプライマーをデザインします。
・プライマーの配列内にも4つ以上の連続塩基は避ける必要があります。
このように、プライマーのデザインは考慮すべきポイントがいくつかあり、簡単ではないため、デザインしたプライマーによっては、実験がうまくいかず、余計な時間やコストがかかってしまう可能性があります。そこで、ヒトエクソームとヒトミトコンドリアゲノムを実験対象とされている方には、サーモフィッシャーサイエンティフィックの検索ツールApplied Biosystems™ Primer Designerツールのご利用をお勧めしています。ヒト以外を対象に実験対象とされている方はクラウドサービスのOligoPerfectデザイナーをご利用いただけます。
カスタムデザインされたプライマーの検証
カスタムデザインされたプライマーが有用かどうか検討いただくには、当社のMultiple Primer Analyzerをご利用いただけます。Multiple Primer Analyzerは1本のプライマー配列から複数本のプライマー配列のTm値を算出する以外にもプライマーダイマー形成のシミュレーションが可能です。
Multiple Primer Analyzerの使い方
①プライマー配列をFASTA形式で登録します。
>プライマー名1
プライマー配列
>プライマー名2
プライマー配列
…
②プライマーの濃度、塩濃度、ダイマー検出パラメーターを設定します。
サンガーシーケンス用プライマーとして確認する場合は、プライマー濃度を0.16 µM、塩濃度を50 mM、パラメーターを3で計算します。
③Tm値などの算出結果が表示されます。
結果はテキストコピー(Ctrl+A、Ctrl+C)し、表計算ソフトウエアなどにペースト(Ctrl+V)することができます。
④プライマーダイマーが予測された場合、結果が表示されます。
結果はテキストコピー(Ctrl+A、Ctrl+C)し、テキストエディターなどにペースト(Ctrl+V)することができます。
まとめ
・サンガーシーケンスワークフローにおいてもプライマーデザインは重要であり、多くの項目を検討する必要があります。
・プライマーをデザインには無料で使えるApplied Biosystems™ Primer Designer™ ツール、OligoPerfectデザイナーがあります
・プライマーデザインの検証には無料で使えるMultiple Primer Analyzerがあります。
無料ツールを用いたプライマーデザインでお困りの方は、ぜひアプリケーションデザインサービスを検討してみてください。
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研究用にのみ使用できます。診断目的およびその手続き上での使用はできません。