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Patheonファーマサービシズについて
Patheonは、医薬品原薬(API)、バイオ医薬品、製剤、臨床試験ソリューション、ロジスティクスサービス、商用生産など、開発のあらゆる段階に対応可能な総合的機能を提供する、サーモフィッシャーサイエンティフィックの医薬品受託開発・生産部門です。Patheonは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの混乱の中、製造部門全体でLIMS(ラボ情報管理システム)の導入を行いました。今回は、PatheonファーマサービシズにおけるLIMSの導入事例をご紹介します。
アイルランドのコークにあるPatheonの拠点は、1975年の設立以来、さまざまな医薬品の製造を行ってきました。10棟の生産棟、R&Dのパイロットプラントのほか、プロセス開発や原薬のスケールアップ、物理的特性評価をサポートする、大規模なラボを有しています。
Patheonは、合併によってサーモフィッシャーの一部となり、さまざまなお客さまの医薬品生産に対するニーズに応えるため、生産能力をさらに増強する必要がありました。Patheonはそれまで、別のLIMSソフトウエアを使用していましたが、それまで使用していたLIMSの設定は特殊で、仕様の使いやすさについて課題があると認識されていました。そのためPatheonコーク工場にとって、サーモフィッシャーとの合併、そして所有権の移転がLIMSを入れ替える良い機会となったのです。
PatheonのSampleManager LIMSソフトウエア導入
Patheonのラボアプリケーションチームは、Thermo Scientific™ SampleManager™ LIMSソフトウエアをAmazon Web Services™(AWS™)のクラウドサーバー上に導入し、既存のソフトウエアとの置き換えを行うことに決定しました。コーク工場でのLIMSの導入は、世界各拠点への展開に先立って行われ、続いて各拠点への展開が行われました。
LIMSをラボで活用することで、外部機器やシステムとの相互連携、プロセスの自動化やペーパーレスでの運用が実現し、生産性向上により、ビジネス拡大にも対応できる基盤ができました。
ただし、LIMSのリニューアルが行われたのが新型コロナウイルス感染症のパンデミックとその後のロックダウン中であったため、オンライン中心での導入支援を行う必要がありました。サーモフィッシャーのLIMS導入プロジェクトチームは、オンラインを組み合わせたトレーニングや定期ミーティングなどの支援を行い、効率的に導入支援を進めました。この際追加された機能は、マルチレベルパラメータ(MLP)、サンプルライフサイクル、製品ワークフロー、Waters™ Empower™ クロマトグラフィーデータシステムとの接続インターフェース、分析証明書、仕様レポートなどです。また、2021年7月には安定性試験、2022年6月にはラボ管理システム(LES)、消耗品管理、機器インターフェースが追加されました。
コーク工場は現在も、サーモフィッシャーサイエンティフィックのグローバルラボオフィス(GLO)とサポートチームの支援を受け、SampleManager LIMSソフトウエアの仕様設計や、システムのセットアップとインストールの実地指導だけでなく、継続的なサポートとトレーニングも受けています。
SampleManager LIMSソフトウエア導入による効果とメリット
SampleManager LIMSソフトウエアを導入したことでPatheonのビジネスに以下のようなメリットがもたらされました。
• マルチレベルパラメータ(MLP)仕様
SampleManager LIMSソフトウエアにより、チームのMLP管理能力が向上しました。設定や構成が簡単なことはもちろん、承認プロセスも容易になりました。MLP仕様が以前のシステムよりもはるかに簡単に管理できるようになり、仕様別にタブを分けたり、パラメーターが同一画面上で簡単に視覚化できるようになりました。
• 分析証明書
分析証明書を作成する機能は、コークのチームにとって非常に重要なポイントでした。以前は手作業での作成と事前チェックにかなりの時間を要していましたが、SampleManager LIMSソフトウエア導入後は、証明書を簡単に設定できるようになりました。発行前の証明書が、ソフトウエア上で簡単に確認できるようになり、証明書発行に関するプロセスの時間が大幅に短縮されました。

<分析証明書のサンプル>
• シンプルな機器インターフェース
シンプルな機器インターフェース機能により、データの整合性が強化するとともに、データの記録とチェックが容易になったことで、時間節約効果が向上しました。
• LES(ラボ実行システム)による規制コンプライアンスの簡素化
アイルランドの医療製品規制庁(HPRA)は、SampleManager LIMSソフトウエアのLES機能と、その利点を実証するコーク工場チームの対応を、高く評価していました。スタッフのトレーニング記録や機器の校正状況は、LIMS上でリアルタイムに確認することができ、各機器がラボのフローで使用できる状態かどうかも確認できます。それを目にしたHPRAの監視官からは、そこでのプロセスがコンプライアンスに沿った方法である、とコメントがあったそうです。
コーク工場では同様に、FDA(米国食品医薬品局)向けにもコンプライアンスを証明し、複数のクライアントによる監査を受け入れる必要性があります。SampleManager LIMSソフトウエアが実行中の重要なステップをハイライト表示することで作業者の注意を喚起し、対応を確認できる点も、全ての監査で高く評価されました。以前は、作業者によってSOPのステップの解釈が異なったり、対応に一貫性がなかったりすることで結果にばらつきが生じることがありました。ただ、SampleManager LIMSソフトウエアは毎回同じ方法、同じ順序で実行するよう使用者に指示を出すため、確実な手順で作業を実行できるようになったのです。
• データの可視化
SampleManager LIMSソフトウエアでは、ダッシュボードの画面上で、リソースの可用性、在庫情報、ロケーションのステータス、ラボのパフォーンスなど、ラボおよびビジネスに関する主要な分析情報をインタラクティブな形式でわかりやすく表示・確認できます。Microsoft™ Power BI™との接続により、ソフトウエアに保存されたデータから有用な情報を導き出すことができます。コーク工場のラボでは、Power BI内で保留中のサンプルやその他のKPIをダッシュボードに設定して、シフト計画のサポートに役立てています。
このダッシュボードは、1日に3回自動更新され、現在キューに入っているジョブを表示します。これにより、ラボに物理的な予定表を掲示して管理する必要がなくなりました。
• スタッフのトレーニング
全てのトレーニング記録がSampleManager LIMSソフトウエアに記録されるようになりました。作業者がプロセスや機器に必要とされる資格を持っていない場合に、SampleManager LIMSソフトウエアがプロセスの実行を許可しない設定にしています。以前はトレーニング状況を手動でチェックする必要がありましたが、この手順自体がミスを起こしやすいもので、運用が大きく改善されました。
• 生産性向上
SampleManager LIMSソフトウエアによって、作業者に時間的余裕が生まれ、より効率的に仕事ができるようになりました。
クライアント数が増えても、同じ水準で注意を払いながらクライアントの原薬を管理できています。現在、チームは20社以上のクライアントを抱えています。これは、これまで以上に管理すべき仕様が増えたということであり、SampleManager LIMSソフトウエアを導入していなければ対応できていなかったでしょう。
SampleManager LIMSソフトウエアによって、適切に一貫したデータを収集するための労力が軽減され、チーム全体が研究に集中できるようになったことは間違いありません。
SampleManager LIMSソフトウエアは、ラボのさまざまなソースから取得した複雑なデータをより迅速に分析、解釈、報告する強力なツールです。その結果、人的ミスを減らし、均一なプロセスで作業を進めることができ、高品質な原薬を迅速に納入し、より多く生産することができます。これにより、工場が高品質な製品を生産する能力に対して、お客さまの信頼を得ることができます。
SampleManager LIMSソフトウエアのクラウド上への各拠点導入により、拠点における作業がよりシームレスになることもお客さまのメリットです。
例えば、世界中で統一された共通のフォーマットに沿って分析証明書、安定性試験計画、報告書を作成できるようになります。Patheonのお客さまが規制当局への申請を準備する際に、安定性データを簡単に統合することができれば、製品登録を簡素化してより迅速かつ効率的に承認を得ることができます。これは、高品質なプロセスを通して提供される医薬品や治療法を患者が利用できるようになるというメリットにつながるでしょう。
将来へのロードマップ
Patheonでは、LIMSの活用をさらに強化しています。強化ポイントの1つは、製品リリースの自動化を可能にするSAP™インターフェースの導入です。サンプルデータが承認されると、SAPに承認情報が送信され、バッチがリリースされます。
また、現在紙で管理されている環境監視(EM)プログラムも、今後機能として追加する予定です。チームは四半期ごとに、アイルランド環境保護局(EPA)にプロセスと精製水に関する報告書を提出しなければなりませんが、多くの紙媒体のプロセスと同様、これも非常に手間と時間がかかる作業です。現在はデータから傾向を実際に特定することができない状況ですが、EMをLIMSで管理するようになれば、もっと簡単に対応できるようになると期待されています。
(LES)ラボ実行システムの詳細は、こちらの記事をご参照ください。
また、SampleManager LIMSソフトウエアの詳細は、以下をご参照ください。
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。
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Microsoft and Power BI are trademarks of Microsoft Corporation.
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