腸内マイクロバイオーム研究はどのようにSARS-CoV-2ワクチン開発に役立つのか?

高い病原性を持つ新型コロナウイルスSARS-CoV-2は、全世界規模で感染が拡大しており、恐怖が拡がっています。
COVID-19に対する治療は世界的な影響が大きく、その必要性も高いことから、COVID-19のような世界的な感染症に対する公衆衛生のためのワクチンの重要性とその有効性研究の進歩に対する意識が高まっており、研究者たちはワクチンの開発を互いに競い合って進めています。

ワクチン開発における腸内マイクロバイオーム研究の重要性

SARS-CoV-2に対する効果的なワクチンを開発するには、外部環境から私たちを守るための人間の免疫システムに影響を与える主要な因子を理解することが重要です。人間の免疫に影響を与えると考えられている重要な因子の1つとして、腸内マイクロバイオームが挙げられます。腸には何十万もの多様な細菌が存在しており、腸内マイクロバイオームはヒトの免疫、代謝、中枢神経系の遺伝子調節にさまざまな影響を与える第二のゲノムであると考えられています。研究者は、ある種の細菌叢の減少などによる腸内マイクロバイオームの多様性の変化が、病原菌感染に対する感受性や、ワクチンなどの免疫に介入するさまざまな方法の有効性にどのように影響を及ぼすかを理解することに注力しています。このようなマイクロバイオームの多様性を正確に理解するためのソリューションの1つが、ハイスループットな次世代シーケンシング(NGS)技術を使用して、微生物集団全体のゲノム情報を取得することです。高感度なNGSは、培養ベースの手法とは異なり、培養できない可能性のある微生物を含む、環境変化に敏感で希少な分類群の情報を取得することができます。これらの微生物群集内における複雑な相互作用、免疫応答やワクチンの有効性に影響を与える可能性のあるヒトと微生物の関係を理解するためには、このような高い感度が必要です。

腸内マイクロバイオームとワクチンの関係

最近の論文において、免疫学の研究者たちは、NGSを使用して抗生物質による腸内マイクロバイオームの変化とインフルエンザワクチンに対する反応性を解析しています。ワクチン接種以前に抗生物質の治療を受けた健康な人において、微生物叢の減少が最大180日間観察され、炎症の増加と、特定のインフルエンザ株に対する抗体産生の減少が認められました。前の年のワクチンやインフルエンザに、より類似していた株では、健康な人と抗生物質を投与した人の間の免疫反応に有意差はありませんでした。しかし、以前に抗体産生や免疫記憶がなかったH1N1ウイルスでは、抗生物質を投与された人において免疫反応が弱まり、腸内微生物叢の減少と免疫反応に関連する二次代謝産物の産生が生じました。

腸内マイクロバイオームの多様性を理解することは将来的にも重要であることから、この研究のようにNGSを利用して、今日の免疫学研究の学際的課題の1つに取り組みながら、健康な個人だけでなく、高齢者、幼児、免疫がうまく機能しない人に対しても微生物を介した免疫反応を調べるために多くの研究が行われています。ワクチンが未だ開発中であるこの前例のない時期に、SARS-CoV-2は世界中で指数関数的に拡大し続けているため、Ion AmpliSeq™ Microbiome Health Research Kitを利用したターゲットNGSは、微生物を介した健康的な免疫を理解し、特徴付けるための最適なツールとなります。

まとめ

Ion AmpliqSeq Microbiome Health Research Kitは、16S rRNA遺伝子の中の9つの可変領域のうち8つを利用し、細菌叢の変動と分類群特異的な識別を正確に検出する非常に感度の高いワークフローであり、現在の重要な時期に、人間の健康とワクチンなどの免疫を調節する薬剤の有効性に影響を与える可能性がある腸内マイクロバイオームの変化を理解するための効率的かつ包括的な研究ツールです。

ヒト研究用の最新のマイクロバイオームパネルの詳細については、www.thermofisher.com/ngsmicrobiomeにアクセスしてください。

微生物のシーケンシング

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参考文献
Thomas Hagan, et al., (2019) Antibiotics-Driven Gut Microbiome Perturbation Alters Immunity to Vaccines in Humans.

研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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