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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 【やってみた】RNAサンプルをテキトーに扱って本当に分解するか調べてみた

【やってみた】RNAサンプルをテキトーに扱って本当に分解するか調べてみた

Written by LATB Staff | Published: 08.24.2016

▼もくじ [非表示]

  • はじめに
  • RNA抽出とリアルタイムPCR
  • リアルタイムPCRの結果
  • 手のひらから回収したRNAの分解度測定
  • まとめ
    • DNA/RNAリファレンスガイドPDF版 無料ダウンロード
  • 研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

はじめに

RNAはDNAと比較してとても分解されやすい物質です。RNAを取り扱う実験では、DNAを取り扱う実験よりも慎重な操作と分解を防ぐ試薬が必要です。RNAが分解される主な原因はRNaseのコンタミであり、RNA用の器具、材料には素手で触らないように手袋を常に着用して実験しなければならないことは、RNAを取り扱ったことのない方でも聞いたことはあるかと思います。

しかし、実際にRNAサンプルが分解したことを確認した方は少ないのではないでしょうか?そこで、今回は、グローブを着用した状態と素手の状態でRNAの抽出およびリアルタイムPCR実験を行い、本当にRNAサンプルが分解されるかどうかを検証してみました。

RNA抽出とリアルタイムPCR

  1. グローブを着用した状態、または素手の状態で、Hela細胞からPureLink RNA Mini Kitを使用してRNAを抽出した
  2. Qubit RNA HS Assayを用いてQubitでRNAの濃度を測定した
  3. Agilent RNA6000 Pico Kitを用いてそれぞれのRNAのRIN(RNA Integrity Number)値を測定した
  4. Taqman RNA-to-Ct 1-Step Kitを使用してリアルタイムPCRを行った
  • 使用機器: StepOne リアルタイムPCRシステム
  • 使用プローブ: Human ACTB FAM-MGB、Human GAPDH FAM-MGB

リアルタイムPCRの結果

グローブを着用した状態と素手の状態でRNAを抽出し1-Step リアルタイムPCRを行った結果、増幅曲線に違いは見られませんでした(図1)。また、RNAの分解度を示す数値、RIN(RNA Integrity Number)値を測定したところ、グローブを着用して回収したRNAは、9.20、素手で回収したRNAは、9.10と、分解度に違いは見られませんでした。

degradation-of-rna-fig1

図1 グローブを着用した状態と素手の状態でRNAを抽出し行った1-Step リアルタイムPCRの増幅曲線。内在性遺伝子としてGAPDHとβ-Actinを使用した。赤色の線はグローブを着用した状態で回収したRNAを鋳型としたGAPDHの増幅曲線、黄色の線は素手の状態で回収したRNAを鋳型としたGAPDHの増幅曲線、水色の線はグローブを着用した状態で回収したRNAを鋳型としたβ-Actinの増幅曲線、紫色の線は素手の状態で回収したRNAを鋳型としたβ-Actinの増幅曲線を示す。

そこで次は、手のひらにRNAを付着させ、そのRNAを回収し、BioAnalyzerでRNAの分解度を測定してみました。

手のひらから回収したRNAの分解度測定

Total RNA Control (Human)を1 ng/μLに希釈し、手のひら4箇所の測定部位に30μL添加し、15秒間放置後に回収しました。その後、室温に1時間放置した後、Agilent RNA6000 Pico Kitで測定しました。また比較サンプルとして、唾液を混合したRNAサンプルと希釈したRNAサンプルも測定しました。

その結果、希釈原液と比較して、手のひらから回収したRNAは分解されていることがわかりました (図2)。

degradation-of-rna-fig2

図2 手のひらから回収したRNAの純度測定。Sample1は被験者Aの親指から回収したRNA、Sample2は被験者Aの人差し指から回収したRNA、Sample3は被験者Aの薬指から回収したRNA、Sample4は被験者Aの手のひらから回収したRNA、Sample5は被験者Bの親指から回収したRNA、Sample6は被験者Bの人差し指から回収したRNA、Sample7は被験者Bの薬指から回収したRNA、Sample8は被験者Bの手のひらから回収したRNA、Sample9は唾液を加えたRNA、Sample10はコントロールとして使用した希釈したRNAを示す。

まとめ

グローブを着用した状態と素手の状態でRNA実験を行い、本当にRNAサンプルが分解されるかどうかを検証してみた結果、リアルタイムPCRに影響するほどのRNAの分解は確認できませんでした。しかし、若干の個人差があるものの、直接手に放置したRNAは分解されていたことから、手にRNaseが存在するのは間違いではないようです。

慎重に操作すれば素手でもRNAは分解しないようですが、グローブを着用したほうが、安心してRNA実験できそうです!

本記事は、RNAをテキトーに取扱うことを推奨している意図はございません。たとえ自分自身のRNAサンプルが分解しなくても、器具や試薬へのRNase汚染の危険性がありますので、グローブを着用しての実験を推奨いたします。

DNA/RNAリファレンスガイドPDF版 無料ダウンロード

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