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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 【やってみた】抗体を入れてすぐに測定してみた(フローサイトメトリー)

【やってみた】抗体を入れてすぐに測定してみた(フローサイトメトリー)

Written by LatB Staff | Published: 07.09.2024

一般的に抗体を反応させるためには30分や1時間といった待ち時間が必要です。しかし、なるべく早く実験を終わらせたい!とみなさまお考えではないでしょうか。とはいっても、反応時間を短縮した影響を知るため予備実験するにも時間や労力、費用がかかります。そこでみなさまのご参考となるようなデータを取ってみようと思いつきました。
本記事では、抗体を入れてすぐ~90分まで経時的にフローサイトメトリーで測定し、そのシグナル値をまとめました。

▼もくじ [非表示]

  • 材料と方法
  • 結果
  • まとめ
    • 【無料ダウンロード】フローサイトメトリープロトコルハンドブック(英語版)

材料と方法

材料:

  • ヒト子宮頸がん由来細胞株HeLa
  • ヒト白血病由来細胞株Jurkat
  • CD44 Monoclonal Antibody (IM7), FITC #11-0441-8
  • CD45 Monoclonal Antibody (HI30), APC #17-0459-42
  • Invitrogen™ Attune™ CytPix Flow Cytometer

方法:

  1. HeLaまたはJuarkt細胞を2×105 cells/100 µL/sampleとなるようにPBSに懸濁
  2. HeLaにはFITC標識CD44抗体(1 µL/0.5 µg/sample)、JurkatにはAPC標識CD45抗体(5 µL/0.06 µg/sample)を添加して懸濁
    ※抗体添加量は各抗体製品のメーカー推奨量
  3. 室温で抗体反応
  4. 反応時間が終了したサンプルはPBSを0.9 mL加えて希釈し、すぐにAttune NxTフローサイトメーターで測定
    ※遠心分離にかかる時間の影響を除外するため、洗浄は行わずPBSによる希釈のみで短時間(およそ20秒)のうちに測定しました。
  5. 結果

    まずは図1のヒストグラムプロットをご覧ください。
    ネガティブコントロール(上段)と比べて、抗体を入れてすぐに測定したサンプル(中段)ではHeLa-CD44抗体、Jurkat-CD45抗体ともに明らかにピークが右にシフトし、抗体がある程度反応していることが分かります。一方で、60分間反応させたサンプル(下段)ではさらにピークは右にシフトしていることから、さすがに抗体を入れてすぐでは反応は飽和していないことが分かります。

    図1. フローサイトメトリーのヒストグラムプロット
抗体なしのネガティブコントロール(上段)、抗体を入れてすぐに測定(中段)、抗体添加後60分後に測定(下段)
黒線で示したゲートは各抗体について同じ設定で表示している

    図1. フローサイトメトリーのヒストグラムプロット
    抗体なしのネガティブコントロール(上段)、抗体を入れてすぐに測定(中段)、抗体添加後60分後に測定(下段)
    黒線で示したゲートは各抗体について同じ設定で表示している

    では、どのくらいの時間で抗体反応は飽和したのでしょうか。図2は抗体を入れてすぐ測定(0分)から90分間まで反応時間を振って測定した結果です。

    図2. 抗体反応時間を0分(抗体を入れてすぐ)~90分まで振って測定した結果
縦軸は蛍光強度の平均値(MFI: Mean of Fluorescence Intensity)

    図2. 抗体反応時間を0分(抗体を入れてすぐ)~90分まで振って測定した結果
    縦軸は蛍光強度の平均値(MFI: Mean of Fluorescence Intensity)

    どちらの抗体も、抗体を入れた後はしばらくシグナル値(MFI)の増加が見られ、時間とともに上昇が頭打ち、つまりプラトーに達し、反応が飽和したと考えられます。しかしプラトーに達した時間は、Jurkat-CD45抗体では30分、HeLa-CD44抗体では1分でした。
    このプラトーに達するまでの時間差は、抗体と抗原の結合強さ(アフィニティ)や、使用した抗体の濃度、サンプルとした細胞で発現している抗原量などさまざまな要因があると考えられます。
    例えばアフィニティが高い抗体は短時間でより反応しますし、抗原量が多いまたは抗体量が少ない(薄い)場合は飽和に達するまでに時間がかかると予想されます。
    このように抗体の反応時間は、使用する抗体やサンプルによっても必要な時間が異なることが分かります。
    実験の目的が蛍光強度を定量的に測定したい場合はプラトーまで反応させた方が良く、例えば60分など十分な反応時間が必要です。ですが、もし陽性/陰性の判定だけでよいのであれば、ひょっとしたら抗体反応時間はごく短時間でも良い場合もあるかもしれません。

    まとめ

    • 抗体は入れてすぐでも意外に反応している
    • 反応がプラトーに達する時間は抗体によって異なる
    • 陽性か陰性か知るだけなら入れてすぐに測定しても良いかもしれない

    いかがでしたでしょうか。今回は究極の時短テクニックとして、反応時間をほぼ取らないとどうなるかやってみました。さすがに抗体入れてすぐはほぼ反応しないだろうと予想していたのですが、意外にも明瞭なシグナルを検出できました。抗体やサンプルによって十分な条件検討が必要ですが、ルーチンワークとして陽性/陰性の判定実験であれば、ひょっとしたら抗体反応を非常に短くできる可能性をお示しできたかもしれません。

    当社ではフローサイトメトリーをはじめ、細胞培養や蛍光イメージング、ゲノム編集など、実際に実験(実習)を行いつつ学べるハンズオントレーニングを各種開催しています。
    その中で今回のような実験結果もご紹介していますので、これから新しい実験を始められる方、より理解を深めたい方はぜひご参加ください!

    ハンズオントレーニングの一覧ページはこちら

    【無料ダウンロード】フローサイトメトリープロトコルハンドブック(英語版)

    ダウンロードはこちら

     

    研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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