培養細胞を扱う研究では,細胞を安全に長期間凍結保存することがよくあります。そこで、今回は哺乳類細胞の凍結保存法と解凍法をまとめてみました。ぜひ参考にしてみてください!
哺乳類細胞の凍結保存法
哺乳類細胞の凍結保存は、コンタミネーションによる損失を防ぎ、樹立細胞系の場合は遺伝的変化を最小限に抑え、寿命のある細胞系の場合は老化や形質転換を回避する役割があります。凍結保存の前に、細胞の特性を分析し、汚染がないことを確認しておいてください。
Recovery凍結細胞保存用培地は哺乳類細胞を凍結保存するための完全培地です。Recovery凍結細胞保存用培地を使用することで細胞の生存率は平均で25%上昇し、また、凍結保護物質を量ったり混合したりする必要がないため時間を節約できます。Recovery凍結細胞保存用培地はDMEM(高グルコース)にFBS、ウシ血清、10% DMSOを配合した組成です。
細胞凍結用の一般的な培地は数種類あります。血清添加培地としては、次のような成分を含む培地が挙げられます。
- 10%グリセロールを含む完全培地
- 10%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む完全培地
- 50%順応培地+50%新鮮培地に10%グリセロールを含む培地
- 50%順応培地+50%新鮮培地に10% DMSOを含む培地
無血清培地の場合は、一般的な培地成分は次のようなものです。
- 50%順応培地(無血清)+50%新鮮培地(無血清)に7.5%DMSOを含む培地
- 7.5%DMSOおよび10% BSA(細胞培養用グレード)を含む新鮮な無血清培地
浮遊細胞の場合
- これから凍結保存する細胞の生細胞数を計数します。細胞は対数増殖期のものを使用してください。約200 ~ 400×gで5分間遠心分離して細胞をペレットとします。ピペットでできるだけ上清を除去します。このとき、細胞ペレットを乱さないよう注意してください。
- 血清含有培地の場合は1×107 ~ 5×107 cell/ml、無血清培地の場合は0.5×107 ~ 1×107 cell/mlとなるように細胞を凍結保存培地に再懸濁します。
- 細胞懸濁液を凍結保存バイアルに分注します。バイアルは氷浴または4℃の冷蔵庫に置き、5分以内に凍結作業を開始します。
- 1°C/minでゆっくりと温度を降下させ、細胞を凍結します。この操作は、プログラムフリーザーを利用するか、バイアルを断熱性の箱に立て-70 ~-90°Cの冷凍庫に入れます。凍結後、液体窒素保存容器に移します1。
接着細胞の場合
- 解離剤を使用して細胞を基質から解離させます。細胞への損傷を最小限に抑えるため、解離はできるだけ穏やかに行ってください。
- 解離させた細胞を増殖用の完全培地に再懸濁し、生細胞数を計数します。
- 約200×gで5分間遠心して細胞をペレットとします。ピペットでできるだけ上清を除去します。このとき、細胞ペレットを乱さないよう注意してください。
- 5×106 ~ 1×107 cell/mlとなるように細胞を凍結保存培地に再懸濁します。
- 細胞懸濁液を凍結保存バイアルに分注します。バイアルは氷浴または4℃の冷蔵庫に置き、5分以内に凍結作業を開始します。
- 1°C /minでゆっくりと温度を降下させ、細胞を凍結します。この操作は、プログラムフリーザーを利用するか、バイアルを断熱性の箱に立て-70 ~-90°Cの冷凍庫に入れます。凍結後、液体窒素保存容器に移します1。
凍結保存細胞の解凍
凍結保存細胞は損傷を受けやすいので、穏やかな取り扱いが必要です。凍結保存細胞は素早く解凍し、そのまま増殖用の完全培地に播種します。凍結保存剤(DMSOまたはグリセロール)に対する感受性が特に高い細胞の場合は、遠心して凍結保存剤を除去してから増殖用完全培地に播種します。以下は凍結保存細胞を解凍する場合に推奨される方法です。
直接播種法
- 細胞のバイアルを保存容器から取り出し、37℃の水浴で素早く解凍します。
- 解凍された細胞をそのまま増殖用完全培地に播種します。解凍細胞1 mlあたり10 ~ 20 mlの増殖用完全培地を使用します。生細胞数を計数してください。播種濃度は生細胞数で3×105 cell/ml以上としてください。
- 細胞を12 ~ 24時間培養します。その後、培地を新鮮な完全培地と交換して、凍結保存剤を除去します。
遠心法
- 細胞のバイアルを保存容器から取り出し、37°Cの水浴で素早く解凍します。
- 解凍細胞1 ~ 2 mlを約25 mlの増殖用完全培地に移します。できるだけ穏やかに混合します。
- 約80×gで2 ~ 3分間遠心分離します。
- 上清を除去します。
- 細胞を増殖用完全培地に穏やかに再懸濁し、生細胞数を計数します。
- 細胞を播種します。播種濃度は生細胞数で3×105 cell/ml以上としてください。
参考文献
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