蛍光・免疫染色は、細胞内外の分子を可視化する手法として広く用いられています。最近では、顕微鏡や解析ソフトウェアの高性能化、さまざまな染色の方法や蛍光プローブの開発などにより、多種多様のターゲットを検出することが可能となっています。また、これらの実験では複数の蛍光色素を使用する多重染色を行い、一度に複数のターゲットを観察することが一般的に行われています。この多重染色を行う際には、いくつか注意が必要です。
そこで今回は、そのなかの一つである蛍光色素の漏れ込みについて、ご紹介いたします。
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蛍光色素の漏れ込みとは?
2種類以上の蛍光色素を使用する場合、一つの蛍光色素からの光が他の蛍光のチャネルで観察されてしまう可能性があります。これを蛍光色素の漏れ込みといいます。使用する蛍光色素の蛍光波長が近い場合や、蛍光のスペクトルの範囲が広い蛍光色素を使用した場合、漏れ込みが生じる可能性が高くなります。漏れ込みが生じると、本来蛍光を発していない領域で蛍光が得られてしまうため、データの解釈を間違ってしまう可能性があります。
蛍光の漏れ込みを防ぐには?
蛍光の漏れ込みを防ぐには、以下のような点に注意してください。
・蛍光色素とフィルターの選択を適切に行ってください。観察を行いたい各蛍光色素に、最も適切なフィルターを使用するように心がけてください。
・発光スペクトルの狭い蛍光色素を使用することで、漏れ込みを最小限に抑えることも可能です。
・複数の蛍光色素を使用する実験をデザインする場合には、スペクトルがお互いにオーバーラップしない蛍光色素を選択してください。
・単染色のみのコントロールを作成してください。
・それぞれの蛍光で発現領域が完全に一致することはまれです。このような状態の時には蛍光が漏れ込んでいる可能性がありますので注意が必要です。
オススメの蛍光色素の組み合わせは?
それでは蛍光の漏れ込みが生じにくい、定番の蛍光色素の組み合わせを紹介します。
3重染色の場合
・DAPI
・Invitrogen™ Alexa Fluor™ 488 Dye(FITCチャンネル)
・ Invitrogen™ Alexa Fluor™ 594 Dye (Texas Red™チャンネル)
4重染色の場合
・DAPI
・Alexa Fluor 488 Dye(FITCチャンネル)
・Invitrogen™ Alexa Fluor 555 Dye(TRITC/ローダミンチャンネル)
・ Invitrogen™ Alexa Fluor™647 Dye(Cy5™ チャンネル)
これらの組み合わせでも露光時間を延長するなど、極端な処理を行った場合には、蛍光が漏れ込む可能性がありますので、観察の際の顕微鏡の設定にも気をつけてください。
ご自身で蛍光色素を選択される際には
弊社が提供するウェブアプリに蛍光スペクトルビューアーがあります。
波形データを確認したい蛍光色素を選択すると、励起波長と蛍光波長がグラフ表示され、励起蛍光スペクトルと各種フィルターの適合性を簡単に比較することができます。ぜひご利用ください。
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