なぜRAS病(RASopathies)の臨床研究において、迅速かつ自動化されたターゲット次世代シーケンス(NGS)が重要なのでしょうか? RAS病関連疾患は、Ras /マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路の変異によって引き起こされる遺伝的症候群に分類されます。MAPKシグナル伝達経路は、正常な成長と発達にとって重要な多くの細胞プロセスをコントロールするために不可欠です。最も一般的なRAS病の1つはヌーナン症候群で、1,000~2,500人の出生のうち約1人に存在します。ヌーナン症候群は遺伝する可能性がありますが、診断された症例の60%は、de novo変異または自然突然変異が原因です。
ヌーナン症候群は、身体の多くの領域に影響を与える可能性があります。典型的な症状は、特徴的な顔貌、低身長、先天性心不全、発達遅延、およびその他の併存疾患です。ヌーナン症候群は、症状の違いにより研究することが困難な場合があります。場合によっては症状だけで特定できることもありますが、同様の特性をもつ他の疾患の可能性を排除するために、遺伝子検査の実施が推奨されています。
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一度で多数の遺伝子解析を可能にするIon AmpliSeq テクノロジー
ヌーナン症候群や他のRAS病に関連する多くの遺伝子が知られています。単一遺伝子検査を含む標準的な遺伝子解析法は遺伝性疾患研究者によってしばしば利用されますが、これらの方法だけでヌーナン症候群のような複雑な症状に関与する多くの変異を明らかにするためには、時間がかかり、費用がかさみます。ターゲット次世代シーケンス(NGS)を含む複数の方法を使用するアプローチは、1回のテストで多くの遺伝子を正確に解析できることによりコストを削減し、時間を節約することができるため、魅力的な選択肢となります。Ion AmpliSeq™ テクノロジーなどの増幅技術を用いたターゲットNGSは、最小1 ng の DNAでも実行できる強力な解析方法です。これらの解析は、末梢血や羊水を含むさまざまなサンプル由来のDNAだけでなく、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織などの難易度が高いサンプルで使用することもできるため、因果関係などを検討するための振り返り研究にも利用可能です。
ヌーナン症候群研究のためのターゲットNGSアッセイ開発事例
ポルト大学 分子病理・免疫研究所(IPATIMUP)の研究者は、ヌーナン症候群の臨床研究をさらに進めるために、ターゲットNGSアッセイの開発をしています。彼らはそれまでIon GeneStudio™ S5次世代シーケンスシステムを利用していましたが、現在は検体からレポートまでのワークフローを自動化する、初めての次世代シーケンシングソリューションであるIon Torrent™ Genexus™ システムを利用しています。*
彼らはIon AmpliSeq™ Designerを使用して、ヌーナン症候群やその他のRAS病に関与することが知られている86個の遺伝子をターゲットにしたカスタムパネルを作成しました。このカスタムIon AmpliSeq™ パネルから得られた結果は、出生前および出生後の両方の研究サンプルからヌーナン症候群の存在を最終的に確認するために使用されました。これらのサンプルは、Ion GeneStudio S5システムとGenexus Integratedシーケンサ で解析され、アンプリコンカバレッジの均一性、ベースリードオンターゲット率、およびベースカバレッジの均一性の指標に関して同等の結果が得られました。さらに、Ion Torrent™ Genexus™ Integratedシーケンサの、核酸からバリアントレポートに至るまでを、たった1回のユーザー操作で自動化でき、ターンアラウンドタイムが1日という特徴は、解析結果を迅速かつ簡単に得るために非常に重要でした。
カスタムIon AmpliSeqパネルのカバレッジ解析は、Genexus Integratedシーケンサと GeneStudio S5の機種間において、出生後および出生前の両方の研究サンプルで同等の結果になりました。
遺伝性疾患関連の多数の遺伝子を提供するIon AmpliSeq On-Demandパネル
ヌーナン病に関連する遺伝子の多くは、臨床研究者にとって使いやすい、テスト済みで、デザイン済みのIon AmpliSeq™ OnDemandパネルとしても利用可能です。Ion AmpliSeq On-Demandパネルは、RAS病を含むさまざまな遺伝性疾患に関連することが知られている5,000以上の遺伝子を提供します。これらの遺伝子デザインは、ウェットラボでテストされており、研究者が効率的に新しいアッセイをラボに導入できるように、カスタムパネルに組み合わせることができます。この遺伝子一覧はIon AmpliSeq™ デザイナーに登録されており、興味のある遺伝子を直接検索することも、疾患研究領域(DRA)から検索することもでき、Ion Genestudio S5システムとGenexusシステムの両方のプラットフォームに対応します。Ion AmpliSeq On-Demandパネルのもう1つの利点は、従来のカスタムパネルではバルクサイズで提供されることが多かったパネルが、より実用的なパックサイズで入手ができることです。これにより、プロジェクトの進捗状況に合わせて効率的に、便利に利用することができます。
Ion AmpliSeq Designerにサインインして、疾患研究領域ポータルにアクセスします。このポータル画面では、疾患の関連性ごとに整理されたIon AmpliSeq on Demand遺伝子を閲覧できます。
IPATIMUPのような臨床研究者の努力により、RAS病の遺伝的原因に関する知識は常に進展しています。 これらの突然変異の多くが研究によって特定されているため、正確で包括的な遺伝子解析の必要性は高まり続けるでしょう。さらに、Genexus Integrated シーケンサとIon AmpliSeqターゲット遺伝子パネルを組み合わせることで、わずか1日で結果を得ることができ、臨床研究者にとって前例のない自動化と使いやすさを手に入れることができます。
まとめ
複雑な疾患研究のためのIon TorrentTM ターゲットNGSソリューションは、合理化されたエンドツーエンドのワークフローと、利用しやすいソリューションにより、あらゆるラボへのNGSの導入を容易にします。これらのソリューションの詳細については、複雑な疾患研究ページをご覧ください。
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次世代シーケンサ(NGS)入門
次世代シーケンスの原理や何ができるかがよくわからない、または自分の研究領域にどのように活用できるかわからないという方向けに、次世代シーケンスの基本や各研究領域に特化したアプリケーションをまとめました。リンク先から、それぞれの領域に応じたページをご覧いただけます。
参考文献:
1.Bhambhani, “Noonan Syndrome”. American Family Physician, January 1, 2014. Volume 89, Number 1. www.aafp.org/afp
2.Rauen, Katherine A. “The RASopathies.” Annu Rev Genomics Hum Genet. 2013 ; 14: 355–369. doi:10.1146/annurev-genom-091212-153523
3.https://ghr.nlm.nih.gov/condition/noonan-syndrome
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。
*2020年にIon Torrent Genexus精製システムと統合レポート機能が追加された後、検体からレポートまでのワークフローが利用可能になります。