はじめに
弊社ではさまざまな総タンパク質定量用試薬をご用意していますが、どの定量法においても良くお問い合わせいただくのが、「自分のサンプルは測定できるか?」というご質問です。今回は各定量法における共存許容成分の情報や複数の成分が共存している場合の適合性判定方法についてご紹介します。
分光光度計を用いた総タンパク質定量には、さまざまな測定方法があります。測定サンプルに適した測定法を選択するには、各定量法の特徴を知っておく必要があります。弊社の総タンパク質定量試薬に関する、特徴や選択方法については、以前の記事をご参照ください。
“総”タンパク質定量法の種類をまとめてみた|知っておきたい!タンパク質実験あれこれ 第3回 »
BCA法、Bradford法、Lowry法など、“総”タンパク質定量法の原理まとめ|知っておきたい!タンパク質実験あれこれ 第4回 »
共存許容成分と濃度
弊社では、生化学実験で一般的に使用される成分やバッファー類の適合濃度について、弊社の総タンパク質定量試薬毎にまとめた表を公開しています。下記の画像をクリックして詳細をご確認ください(2ページ目以降に表があります)。

Protein assay compatibility table (クリックするとPDFファイルが開きます)
表中の左端の列には各成分名を、右側の列には各タンパク質定量法における共存許容濃度を記載しています。例えば、2-Mercaptoethanolは、660 nm(Pierce 660 nm Protein Assay)の場合、1Mまで共存しても測定は阻害されませんが、BCA(BCA Protein Assay)の場合、0.01%より高い濃度で共存すると測定が阻害されます。また、2ページ目一番下に記載のM-PER™ Mammalian Protein Extraction Reagent(哺乳類培養細胞からのタンパク質抽出試薬)は、660 nm Protein Assayの場合、2倍希釈すれば測定は阻害されず、BCA Protein Assayの場合、希釈不要で直接測定が可能です。
なお、表中の濃度は、各タンパク質定量法におけるtest tube法を用いて弊社でテストした最大の共存許容濃度ですが、あくまで左端の各成分が単独で存在する場合の許容濃度です。別の成分が混合されると、許容濃度が表中の値よりも下がることがありますのでご注意ください。
複数の成分が共存していて適合性が不明な場合
タンパク質溶液中に複数の成分が共存している場合、共存許容濃度の一覧表からでは適合性を予想することが困難です。このような場合には、サンプル測定前に、検量線を作成して適合性を確認します。具体的には次の手順で確認します。
- 水またはPBSなど測定を阻害しないバッファーでスタンダード(BSAなど)を希釈して検量線を作成
- サンプルと同じ組成でタンパク質を含まない溶液(タンパク質が溶けている溶媒)を準備
- 1の溶液で検量線を作成
- 1と3で作成した検量線を比較
検量線比較を行ったとき、濃度の誤差が10%以内であれば2の溶液が適合すると判断します。誤差が10%を超える場合は、2の溶液を何倍かに希釈し、希釈溶媒で3と4を行います。
例えば、PBSで作成した検量線(図中の青色実線)では吸光度が1.4のとき1,000 µg/mLですが、タンパク質が溶けている溶媒で作成した検量線(図中の緑色点線)を見ると、1,460 µg/mLと大きくずれており、測定が阻害されていることが分かります。そこで、タンパク質が溶けている溶媒を水で10倍希釈し、その溶液で作成した検量線(図中の橙色点線)を見ると1,020 µg/mLとなり、PBSで作成した検量線と比べて10%以内の誤差範囲にあります。この例では、吸光度が2の付近で比較しても、タンパク質が溶けている溶媒を10倍希釈すれば濃度の誤差が10%以内にあることが分かります。したがって、この例では、サンプルを10倍希釈してから測定し、検量線から得られた濃度を10倍した値がサンプルの総タンパク質濃度です。なお、希釈しても濃度の誤差が大きい場合には、測定を阻害する成分を除去する必要があります。阻害成分の除去には脱塩、透析、タンパク質沈殿法が利用できます。
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