今回のテーマは「総タンパク質定量法の種類と原理まとめ」と題して、弊社の総タンパク質定量試薬製品の特徴と目的に合わせた選択方法についてご紹介します!
総タンパク質定量概要
クロマトグラフィーによるタンパク質精製、電気泳動、免疫検出などの実験を行うにあたり、あらかじめサンプル中のタンパク質量を測定します。一般的にこの測定操作は “タンパク質定量”と呼ばれています。タンパク質定量には分光光度計を用いる方法や、電気泳動のバンド強度から測定する方法の他に、イムノアッセイ法などがありますが、簡便に“総”タンパク質量を“見積もる”場合には分光光度計を用いる方法が広く利用されています。
表1には分光光度計を用いる各種総タンパク質定量法の例として、弊社が取り扱っているタンパク質定量試薬製品の特徴をまとめました。
製品名 | 反応温度と時間 | 界面活性剤の共存性 | 還元剤の共存性 | 直線性 | タンパク質間の発色強度差*2 | 測定濃度レンジ*1 (µg/ml) |
Pierce 600 nm Protein Assay | 室温, 5分 | ◯*3 | ◯ | ◯ | 大 | 25 ~ 2,000 |
Coomassie (Bradford) Protein Assay | 室温, 10分 | △ | ◯ | △ | 大 | 100 ~ 1,500 |
Coomassie Plus (Bradford) Protein Assay | 室温, 10分 | △ | ◯ | △ | 中 | 100 ~ 1,500 |
BCA Protein Assay – Reducing Agent Compatible | 37℃, 45分 | ◯ | ◯ | ◯ | 小 | 125 ~ 2,000 |
BCA Protein Assay | 37℃, 30分 | ◯ | △ | ◯ | 小 | 20 ~ 2,000 |
Micro BCA Protein Assay | 60℃, 60分 | ◯ | △ | ◯ | 小 | 0.5 ~ 20 |
Modified Lowry Protein Assay | 室温, 40分 | △ | △ | ◯ | 小 | 1 ~ 1,500 |
*1 標準プロトコルの場合
*2 タンパク質の構成アミノ酸の違いに由来して起こる発色強度のばらつき
*3 SDS濃度が0.0125%を超える場合、Ionic Detergent Compatibility Reagent (IDCR)との併用が必要
総タンパク質定量法の選択
総タンパク質定量法として最もよく利用される方法は発色法です。発色法は大きく2つのグループに分類されます。ひとつはタンパク質と発色色素との化学結合を利用した方法で、Bradford(Coomassie)法はこれに相当します。もうひとつはタンパク質存在下で生じる還元銅イオンのキレート錯体を利用した方法で、BCA法はこれに相当します。従来の選択基準では、サンプル中に還元剤や銅イオンのキレート剤が含まれている場合にはBradford(Coomassie)法を選択し、サンプル中に界面活性剤が含まれる場合にはBCA法を選択することが一般的でした。しかし現在では改良が加えられ、それぞれの弱点を克服した製品も開発されています。例えば、従来のBCA法では還元剤存在下での測定が困難ですが、BCA Protein Assay Kit – Reducing Agent Compatibleでは、タンパク質実験で使用される一般的な濃度の還元剤(例: 5 mM DTTまたは35 mM β-mercaptoethanol) が共存可能となりました。またPierce 660 nm Protein Assay Kitは、Bradford(Coomassie)法をベースとした総タンパク質定量キットですが、従来のBradford (Coomassie)法では困難であった界面活性剤共存下での測定が可能になっただけでなく、従来法よりも測定濃度レンジ(25-2,000 µg/mL)が広くなりました。
このように総タンパク質定量法の選択の幅が広がった現在では、まず精度や測定時間(スループット)の他、測定濃度レンジ(感度)や操作性を重視し、その上で還元剤や界面活性剤あるいはその他の成分の共存可能濃度を考慮して選択することが可能になりました。
定量精度については、発色法を利用する総タンパク質定量法のうちBCAベースの方法が最も精度が高いといえます。BCA法では、測定タンパク質の種類(構成アミノ酸)が異なっても、その発色強度の差が小さいため変動係数(CV: Coefficient of Validation)が小さく、検量線作成に使用するタンパク質の種類によって測定値が大きく異なることはありません。また基本的に検量線の直線性が高い(r2 >0.95)ため、タンパク質濃度が高くても(~2,000 µg/mL)他の総タンパク質定量法と比べて測定誤差が少なくなります。一方、Bradfordベースの方法は測定時間が短く室温での測定が可能なため、検体数が多くても比較的簡便に測定することが可能です。
次回はいくつかの総タンパク質定量法の基本原理や特長についてご紹介します。
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