リアルタイムPCRシステムではSNPタイピングも可能。ところでSNPはなぜ重視されるのでしょうか?基本に立ち戻って見て行きましょう。
「SNP(スニップ)」とは、ヒトゲノムで一塩基が変異したものを指し、一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism)の頭文字をとってこのように呼ばれています。「A⇔G」、「C⇔T」の変異が多く、30億の塩基対からなるヒトゲノムでは平均すると1,000bpに1ヶ所のSNPがあると予想されています。
実際にヒトゲノム解析に貢献したセレラのデータベースを基に開発された、CELERA DISCOVERY SYSTEMには400万種以上のヒトSNPsが登録されていますし、公共のデータベースにも数多くの報告がされています。一人のゲノムDNAには父方と母方からの遺伝情報が含まれ、1対の相同染色体を形成しています。一方のゲノム配列をAllele 1とした場合、他方がAllele 2となります。「A⇔G」の変異が見られるSNPをタイピングする場合、Allele1と2の組み合わせから、「A/Aのホモ」、「A/Gのヘテロ」、「G/Gのホモ」という形でSNPタイピングとして検出&判定することになります。
では、SNPタイピングはどのように役立つのでしょうか?SNPは、個人に対する最適な薬剤投与や治療を可能にする「オーダーメイド医療」の実現に一翼を担うと期待されています。また、SNPをマーカーとして用いて疾患関連遺伝子の探索も進んでいるそうですよ。
タンパク質をコードしている領域(coding region)の塩基配列に一塩基の変異が生じると、タンパク質が変化し、生体内で正しい役割を果たすことができなくなることがあります。タンパク質の機能に影響を与えるこのようなSNPを、codingの”c”をとって、cSNPと言う事があります。例えば薬剤の代謝や吸収にかかわる遺伝子にcSNPがある場合、同じ薬の成分と量を投与した場合でも薬が有効に働いたり副作用がでたりするなど、「個人差」を生じる場合があります。最近では、癌遺伝子やP450などの薬物代謝関連遺伝子、ADME/Tox(薬物の吸収・分布・代謝・排出/毒性)に関する遺伝子のSNPタイピングを行なう研究が精力的に進められています。
SNPタイピングが重要な役割を果たしていることがわかりましたね。次回は、SNPタイピングの種類についてお伝えしますよ。お楽しみに!
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