今回は、第5回の記事で解説した、「希釈系列によるスタンダードサンプル」について考えます。
「増幅曲線の傾き」、「Threshold cycle」、「スタンダードサンプル」…これらの意味を、スラスラと説明できますか? 実はシンプルで簡単なリアルタイムPCRの原理。基礎の基礎が、2分でわかります!
どのサンプルをスタンダードサンプルに用いるべきでしょうか?少なくとも、標的遺伝子が発現しているサンプルをスタンダードサンプルに用いる必要があります。
一定の発現量が無い場合は、希釈系列を作成することができないため、当然ながら希釈率に依存した増幅曲線が得られず、検量線が引けません。
こう考えると、解析には、できるだけ、標的遺伝子の発現量が最も多いサンプルを用いることが良いとわかりますね。そもそもスタンダードサンプルは、希釈することで検量線を作成することを思い出して下さい。希釈系列を作成するサンプルに含まれる対象遺伝子の存在量が濃いと想定されるサンプルで検量線を作成することで、目的とする未知濃度サンプルが検量線の範囲内に収まる必要があります。ただし、誘導されて発現するタイプの遺伝子を解析する場合は、検量線作成に用いるサンプルの選択には注意してください。定常状態では発現が無い場合もあるからです。
はい、これでスタンダードサンプルの基本がわかりましたね。では最後に、初めてリアルタイムPCRでサンプル解析しようという方へ、TS白神からのアドバイスです。
初めての実験では、検量線を設定せずに、全サンプルをリアルタイムPCRにかけてみましょう。もっとも早く増幅曲線が立ち上がってきたサンプルが、もっとも高発現なサンプルです。この方法をつかえば、遺伝子の発現量が分からない状態でも、遺伝子が最も高発現しているサンプルがどれかを確認することができます。そして今後は、このサンプルをスタンダードサンプルにすれば良いのです。
次回は、PCRの増幅効率について考えます。お楽しみに!
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