Thermo Fisher Scientific

  • メニュー
    • 分子生物学実験関連
    • 分析・測定関連
    • 細胞培養・イメージング
    • 研究者インタビュー
    • その他
  • このブログについて
  • お問い合わせ
Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 複雑な遺伝性疾患を紐解く!脊髄性筋萎縮症とSMN1遺伝子

複雑な遺伝性疾患を紐解く!脊髄性筋萎縮症とSMN1遺伝子

Written by LatB Staff | Published: 06.08.2020

原因遺伝子の変異を伴う遺伝性疾患の解析は時に複雑性を極めます。脊髄性筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy: SMA)もその一つです。
脊髄性筋萎縮症は、第5番染色体に責任遺伝子を持つ常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)性疾患で、1/54~1/57の保因者頻度と言われ、6,000~10,000人の出生で1人の発症率(国内では10万人当たり、1~2人)です。時間の経過とともに悪化する深刻な病状で、第5番染色体にあるSMN1遺伝子の両コピーの変異によって引き起こされます。
脊髄の運動神経細胞の病変によるもので、SMAには4つのタイプがあります。重度であるタイプⅠは、乳幼児期に体幹や四肢の筋肉が充分に発達せず、尊い命を落としてしまいます。軽度であるタイプⅣは若年成人期に発症しますが、SMA患者のおよそ6割が深刻な影響を受け、幼児期に亡くなります。
SMN1遺伝子の変異が原因のこの疾患ですが、SMN2というバックアップ遺伝子が存在します。この記事では、二つの相同性の高い遺伝子の疾患へのかかわりを紐解きます。

▼もくじ [非表示]

  • 相同性の高い遺伝子が遺伝性疾患の解析を複雑にする
  • 現状の検査体制
    • 臨床検査所見
  • SMN Reporter
  • 次世代シーケンサ(NGS)入門

相同性の高い遺伝子が遺伝性疾患の解析を複雑にする

SMAの原因となる変異の大部分は、欠失、または染色体異常です。SMN1変異の保因者を特定する際の複雑さは、ヒトには第5番染色体に位置するSMN1とSMN2のほぼ同一のコピーが二つあることです。SMN1とSMN2の主な違いは、エクソン7の5’末端側にあります。SMN1の「C」とSMN2の「T」の1つの塩基に違いがあります。さらに、SMN1のmRNAには、エクソン7が含まれますが、SMN2のmRNAは、スプライシングにより一般的にエクソン7が除かれています(図1)。エクソン7の存在は、完全に機能する安定したSMNタンパク質の生成に重要です。

図1 SMAを発症するSMN1変異

SMA患者の約5%には、第5番染色体の長腕の一方に欠失または、遺伝子上に染色体異常があり、もう一方の染色体に点突然変異があります。SMN1遺伝子のコピーが一つしか失われていないため、この突然変異の組み合わせ(欠失または染色体異常のある点突然変異)を持つ検体は、SMA診断テストを実施してもSMAとして診断されません。むしろ、この人はSMAの症状があるとしても、定量的キャリアテストを使用したキャリアのように見えます。
欠失と染色体異常の両方のシナリオで、SMA患者はSMN1エクソン7のホモ接合性欠失と呼ばれるSMN1エクソン7の欠落がみられます。SMA患者はSMN1に変異を持っていますが、常に少なくとも一つのSMN2の正常なコピーを持っています。両方の遺伝子のホモ接合性の喪失は報告されておらず、致命的なものであると考えられています。

図2 SMAにおけるSMN1遺伝子変異の伝播

一部の保因者は、一方の染色体にSMN1が2コピーあり、もう一方の染色体にSMN1欠失がある(2+0のSMAキャリアステータス)と確認されており、サイレントキャリアと呼ばれています。
SMAに罹患した子供を持つことは、2人のSMA保因者間、または、SMA保因者とSMA患者との間の妊娠で発生します。これらの家族では、以下のような妊娠のケースが含まれます。

  • SMAの影響のある出生率は25%
  • SMAキャリアになる出生率は50%
  • SMAを持たず、SMAキャリアではない出生率25%

現状の検査体制

臨床検査所見

  • 血清のクレアチンキナーゼ(creatine kinase: CK)値が正常上限の10倍以下。
    悪化している筋肉から漏れ出ているが、非特異的である。
  • 筋電図で高振幅電位や多相性電位などの神経原性所見がある。
  • 運動神経の伝導速度が、正常下限の70%以上。

SMAが疑われる場合は、遺伝学的検査を受診できます。これは、全タイプの第5番染色体関連SMAを特定するための最も侵襲性が低く、最も正確な方法です。キャピラリ電気泳動(CE)と次世代シーケンシング(NGS)の両方で配列決定が可能です。

新しいマイクロアレイベースのキャリアアッセイには、SMAの変異だけでなく、他の約600の遺伝性疾患の変異も含まれます(図3)。

図3  CarrierScan 1S assay: キャリアスクリーニング研究を拡張する一つのソリューション

これは、SMN Reporterモジュールの⼀部としてSMN1ステータスの解析を含み、SMN1が簡単に視覚化されたコピー数状態のサマリーを、自動エクスポートによって、下流アプリケーションに適したタブ区切りテキストファイルとPNGグラフィックファイルの形式で作成します。

SMN Reporter

SMN Reporterは以下を含みます。

  • SMN1をベースとしたキャリアステータスを決定する新しいアルゴリズム
  • SMNコピー数のグラフィック表示
  • 自動化された単一サンプルの画像出力をサポート

コピー数解析でお困りの方は、NGSやマイクロアレイのサービスを検討してみてください。
Get more information on the Applied Biosystems CarrierScan assay.

次世代シーケンサ(NGS)入門

次世代シーケンスの原理や何ができるかがよくわからない、または自分の研究領域にどのように活用できるかわからないという方向けに、次世代シーケンスの基本や各研究領域に特化したアプリケーションをまとめました。リンク先から、それぞれの領域に応じたページをご覧いただけます。

詳細を見る

 

研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

Share this article
FacebookTwitterLinkedinMail

記事へのご意見・ご感想お待ちしています

  • サーモフィッシャーサイエンティフィックジャパングループ各社は取得した個人情報を弊社の個人情報保護方針に従い利用し、安全かつ適切に管理します。取得した個人情報は、グループ各社が実施するセミナーに関するご連絡、および製品/サービス情報等のご案内のために利用させていただき、その他の目的では利用しません。詳細は個人情報の取扱いについてをご確認ください。
  • 送信の際には、このページに記載のすべての注意事項に同意いただいたものとみなされます。

皮脂RNA解析がもたらす先端スキンケアの可能性

大手企業も注目する「皮脂RNA解析」。本ブロ... by LatB Staff / 05.13.2025

Read More

ベクターマップの読み方~クローニング・タンパク質発現で迷子にならないために 第3回 ベクターマップの読み方:実例集1

さて、第3回です。最終回の予定でしたが、�... by LatB Staff / 01.21.2025

Read More

ベクターマップの読み方~クローニング・タンパク質発現で迷子にならないために 第2回 プラスミドベクターに含まれるエレメントリスト

さて、第2回です。 エレメントリストの見方�... by LatB Staff / 11.08.2024

Read More

神経科学におけるフラグメント解析:複数の疑問を解決する柔軟なツール

脳は驚くべき器官です。さらに驚くべきこと... by LatB Staff / 09.20.2024

Read More
TaqManアッセイの真実:5つのヒミツとは?
マイクロアレイを用いた魚類の育種

個人情報保護方針ウェブサイト利用条件 拠点一覧サイトマップTrademark Information

© 2025 Thermo Fisher Scientific. 無断複写・転載を禁じます.

Talk to us

通知

  • Tweet
  • Facebook
  • Tweet
  • Facebook