正確な実験データを出すためには、試薬を泡立てずに、なおかつしっかりと混合することが重要です。もし試薬が混ざっていない状況で実験を進めると、反応が進まなかったりデータがばらついたりします。今回はピペッティングで試薬を混合する際に意識していただきたいコツをお伝えします。
はじめに
まずはこちらの動画をご覧ください。
黄色の色素で色を付けた比重が小さい黄色水と、青色の色素で色を付けた比重が大きい青色水を用意しました。PCRや制限酵素処理などの試薬調製を想定して、0.2 mLチューブの中に入っている黄色水50 µL(バッファーに該当)に青色水1 µL(グリセロールなどを含む酵素に該当)を添加しました。青色水は比重が大きいのでチューブの底に沈んでいきました。
ピペッティングでの混合は3つの条件で実施しました。
① 1 µL 容量でピペッティング(液面近くで5回)
比重が大きい青色水を添加した後、液面付近にチップの先端がくるようにして、1 µL容量で5回ピペッティングしました。底部に沈んでいる青色水からの距離があるからか、全く混ざりませんでした。
② 1 µL 容量でピペッティング(青色水の付近で5回)
そこで、チップをもう少し深くまで差し込んで同じく1 µL容量で5回ピペッティングしました。しかし、これでも黄色水と青色水を混ぜられませんでした。青色水の近くであれば少しくらいは混ざるかと思ったのですが、意外にもちっとも混ぜられませんでした。
③ 30 µL 容量でピペッティング(液面近くで5回)
次に液面付近にて30 µL容量で5回ピペッティングしました。するとどうでしょう。チューブの底に沈んでいた青色水が1回目のピペッティングでふわっと浮き上がり、ピペッティングを繰り返すことで黄色水と青色水をしっかり混合できました。チューブの中には約50 µLの液体が入っていたので、今回は総液量の6割くらいの容量でピペッティングを実施したことになります。
ピペッティングでの混合の注意点
試薬の総液量の少なくとも半量以上の容量で、ゆっくり丁寧に5~10回を目安にピペッティングしましょう!
以上、ピペッティングで試薬をしっかり混合するたった1つのコツでした。
ピペッティングでの混合では、チューブの中の溶液をしっかり対流させるために総液量の半量以上、望ましくは7~8割程度の容量でピペッティングするとしっかり混合させることができます。一方、総液量よりも多いと(今回の場合は51 µLより多いと)ピペッティング時にチップ中に空気を吸い込んでしまい、試薬が泡だらけになってしまうかもしれません。
まとめ
今回は、ピペッティングで試薬をしっかり混合するときの注意点を動画でお伝えしました。酵素などの試薬溶液はグリセロールが含まれ比重が大きくなっており、動画の青色水のようにチューブの底に沈んでしまいます。今回は比重が大きい色付きの水を調製したので試薬の混ざり具合を可視化することができましたが、通常お使いの試薬は無色透明のものが多いのではないかと思います。小さい容量でのピペッティングではしっかり試薬を混ぜることができませんので、ピペッティング時の容量は少なくとも半量以上ということを意識して実験に取り組んでいただくと、より正確な実験データを得ていただけるのではないかと思います。
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