正確な細胞数のカウントは再現性のある実験を行う上で必要不可欠です。
一般的には血球計算盤を使用し、測定を行いますが、最近では自動セルカウンターを使用する方も多いかと思います。自動セルカウンターは細胞数、細胞の生存率を簡単、迅速に客観的なデータとして出してくれるとても便利な機械です。
一方で人の目では明らかに異物であることが分かるものでも、機械では判断することができず測定してしまう可能性があります。
この記事では、自動セルカウンターで測定した際に明らかに死細胞が多く検出されてしまったというトラブルについて当社の自動セルカウンターであるInvitrogen™ Countess™を例に出し、原因と解決方法を見てみたいと思います。
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明らかに細胞よりも小さい物質を測定してしまっている
この実験では同じ1×10^6 cells/mLの濃度に調製したHeLa細胞を2回に分けて測定しています(図1,2)。

図1

図2
図1では正常に測定ができているものの、図2では明らかに死細胞率が上がっており、総細胞数も増加してしまっています。さらに図2をよく見てみると死細胞よりも明らかに小さい物質を測定してしまっていることがわかります(赤丸部分)。
この2つの測定の違いは何なのでしょうか?
トリパンブルーの沈殿物を測定してしまっている
これらの2つの実験の違いは使用したトリパンブルー(Gibco™ Trypan Blue Solution, 0.4%、製品番号:15250061)の処理方法の差になります。
トリパンブルーは死細胞を染色する試薬として一般的に広く使用されている製品です。こちらの試薬を細胞懸濁液と一対一の割合で混合することで死細胞を青黒く染色することができます。生死判定を行う際には有用な試薬ですが、沈殿物が生じやすいという欠点も持ってしまっています。
上記の2つの測定では同じボトルから分注してきたトリパンブルーを使用したものの、図1での測定には使用前に一度15000 rpmで1分間ほど遠心を行なった上清を使用し、図2の測定では遠心などは行わずにそのままの状態で使用しました。
その結果、図1の測定では遠心によりこの沈殿物を除去することできれいな結果が得られているものの、図2では青黒いトリパンブルーの沈殿物を自動セルカウンターが死細胞と誤判定してしまっています。
従って図1の測定のように、一度遠心を行い、沈殿物を分離させることできれいな結果を得ることができます。
まとめ
自動セルカウンターは短時間で客観的に細胞数を測定してくれるとても便利な機械ですが、死細胞染色の際に使用されるトリパンブルーの沈殿物が入ってしまった場合、この沈殿物を死細胞として測定してしまう可能性があります。
この問題は、トリパンブルーを使用前に一度遠心を行い、沈殿物を除去してから使用することで改善することができます。
正しい細胞数の測定は実験の再現性にもつながりますので、このような明らかに死細胞数が増えた際にはご注意いただければと思います。
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