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アレルの配列決定はキャピラリシーケンサSeqStudio Genetic Analyzerで
佐野利恵 氏(群馬大学 医学部法医学 准教授)
ABO式血液型は、20世紀初頭に発見されて以降、輸血や犯罪捜査などに活用されています。ABO式血液型は、糖転移酵素をコードするABO 遺伝子によって決定されますが、ABO 遺伝子の発現機構の全容は明らかになっていません。群馬大学医学部法医学の佐野利恵氏は、赤血球表面の抗原が少ない特殊な血液型に注目し、転写調節機構の解明と医療への応用を目指しています。研究内容と、その際に利用しているApplied Biosystems™ SeqStudio™ Genetic Analyzerについて伺いました。
血液型抗原が少ない原因はエンハンサー領域の欠失だった
ABO式血液型は、赤血球表面にA抗原またはB抗原があるかどうかによって決まります。ところが、遺伝的にこれらの抗原量が少ない「亜型」という血液型が存在します。佐野氏によると、日本人のうち約0.05%亜型であり、その半分はB抗原が少ないBm型です。佐野氏は、「Bm型は、通常の血液型検査(オモテ検査)ではO型と判定されてしまい、輸血時などに問題となります。Bm型ではABO 遺伝子のコード領域に変異がなく、長い間原因がわからなかったのですが、約12 kbに及ぶ第1イントロンのうち約5.8 kbが欠失していることが、日本赤十字病院との共同研究でわかりました。この領域にABO 遺伝子の赤血球特異的エンハンサーが含まれていたのです。発現調節機構の解明だけでなく、亜型の遺伝子診断につながる研究成果です」と説明します。また、「白血病では、赤血球上のA、B抗原量が低下することがあり、発症に先駆けて抗原の低下が認められる症例があります。メチル化などによってABO 遺伝子の発現が低下した可能性があります」と、疾患の早期発見にも取り組みたいと佐野氏は話します。
アレル特異的なPCR産物をサンガー法でシーケンシング
研究では、ABO式血液型ならではの仕組みのために苦労したこともあったと、佐野氏は次のように話します。「例えばBO型の場合、欠失などの遺伝子変異がどちらのアレルにあるのか厳密に証明する必要があります。ゲノム編集したときの配列確認も同様です。私たちは、ABO 遺伝子のAやBのアレルのみをそれぞれ特異的にPCRで増幅する方法を開発しました。このときの配列決定ではサンガー法を用いるので、次世代シーケンサが普及している今でも、私たちの分野ではサンガー法によるシーケンシングが欠かせません」(佐野氏)。サンガーシーケンシングは、これまで1本キャピラリのABI PRISM™ 310 Genetic Analyzer で行っていましたが、先日SeqStudio Genetic Analyzerを導入。佐野氏は、「以前はキャピラリやポリマーの交換に経験が必要でしたが、SeqStudio Genetic Analyzerはカートリッジタイプなので誰でも交換でき、メンテナンスが容易になりました。PCRで用いた8連チューブのままでセットできるので、実験フローの面でも便利です」と言います。
研究と教育の両方で使いやすいキャピラリシーケンサ
従来機種ではショートリードとロングリードで異なるポリマーをセットする必要がありましたが、SeqStudio Genetic Analyzerはポリマーを共通で使えるところにも利便性を見いだしてる佐野氏。「イントロンでは反復配列が多いのでロングリードを行う必要があるときでも、ポリマーを交換せずに使えるのは魅力です」と話します。また、「サンガー法はシーケンス解析法の基礎であり、教育の場面でも適しており、学生実習にも使っています。結果をすぐに確認できるので、外注するよりもスピーディーで実習でも研究でも便利ですね」と話します。SeqStudio Genetic Analyzerの使いやすさは、教育と研究の両方の場でメリットがあるとのことです。
スピーディーで使いやすい4本キャピラリのDNAシーケンサ
SeqStudio Genetic Analyzer
Applied Biosystems™ SeqStudio™ Genetic Analyzerは、簡単なクリックだけで、サンガーシーケンス解析とフラグメント解析を実施できるキャピラリシーケンサです。オールインカートリッジ方式なので初心者にも使いやすく、次世代シーケンスデータとの高い相関性を確認済みです。
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ライフサイエンス情報誌「NEXT」
当記事はサーモフィッシャーサイエンティフィックが発刊するライフサイエンス情報誌「NEXT」2018年10月号からの抜粋です。
研究用にのみ使用できます。診断目的およびその手続き上での使用はできません。