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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / SDS-PAGEの選び方:ウェスタンブロッティングの製品選びにもう困らない!第3回

SDS-PAGEの選び方:ウェスタンブロッティングの製品選びにもう困らない!第3回

Written by LatB Staff | Published: 02.06.2023


ウェスタンブロッティング向けの製品選びのポイント紹介シリーズ、第3回はSDS-PAGEです。

SDS-PAGEはポリアクリルアミドゲル電気泳動の略で、ウェスタンブロッティングでターゲットタンパク質を検出する前に、分子量に応じてタンパク質を分離するステップです。ご実施された経験がある方も多いでしょう。よく実施されている方法だからこそ、多種多様な製品が開発されています。では、お手元のサンプルに最適なゲルはどれでしょうか。マーカーはどれを使えばよいのか?アプライ量はどのくらい?悩みは尽きません。

その悩み、このブログが解決します!まずはゲルの選び方から確認しましょう。

▼もくじ [非表示]

  • SDS-PAGEゲルの選び方
  • サンプルアプライ量の決め方
  • SDSサンプルバッファーの決め方
  • マーカーの選び方
  • 電気泳動装置とパワーサプライの選択
  • ウェスタンブロッティングのためのSDS-PAGEの選び方
    • 【無料ダウンロード】タンパク質解析ワークフローハンドブック

SDS-PAGEゲルの選び方


1970年代にLaemmliらがSDS-PAGEの手法を確立してからしばらくたちますが、現代は目的や分子量に応じてさまざまなバッファー系のゲルが開発されています。バッファー系が異なると、同じゲル濃度でも、SDS-PAGEを実施したときのパターンが異なりますので、まずはどういったバッファー系のゲルを使うのかを決めましょう。

さて、ゲルのバッファー系のなかでは、Laemmliが開発したTris-Glycine系の実績が圧倒的に多いです。しかし、論文で使用されているからという理由でTris-Glycine系にすぐ絞ってしまうのは、少しもったいないです。現在は、Tris-Glycine系のデメリットをカバーした、Bis-Tris系のゲルというものが開発されているからです。

表1:ウェスタンブロッティング用・SDS-PAGEゲルと泳動バッファー 一覧

内容 特徴 ターゲットタンパク質の分子量 泳動バッファー 分子量ごとの移動度チャート
NuPAGE Bis-Trisゲル 中性ゲルのため、スマイリングが起きづらい。常温保存で有効期限が長い 幅広くカバー MESバッファー
または
MOPSバッファー
Bolt Bis-Trisゲル 中性ゲルのため、スマイリングが起きづらい。常温保存で有効期限が長い。くさび型ウェルでサンプルが多くアプライできる 幅広くカバー MESバッファー
または
MOPSバッファー
Novex Wedgewell Tris-Glycineゲル 古くから使われてきたスタンダードなゲル組成。ウェルは独自のくさび型ウェルで、サンプルが多くアプライできる 幅広くカバー Tris-Glycineバッファー
NuPAGE Tris-Acetateゲル 高分子タンパク質の分離に 高分子 Tris-Acetateバッファー
Novex Tris-Tricineゲル※ 低分子タンパク質やペプチドの分離に 低分子 Tricineバッファー

 

ゲル選びの3つのポイントをご紹介します。

・ゲル選択のポイント① 中性のBis-Trisゲルは安定したデータが出やすい

開発から数十年たった今も、Tris-Glycineゲルは多くの研究者に愛されています。しかしこのゲルはアルカリ性のため、実は残存する非重合アクリルアミドがタンパク質のシステイン残基およびリジン残基と反応する可能性があります。
Bis-Trisゲルはこの弱点をカバーするために開発された中性のゲルで、このような反応が起こりづらく、よりシャープなバンドが得られやすいです。また、MESとMOPSの泳動バッファーによって移動度が異なるため、目的タンパク質の分子量に応じて使い分けることも可能。さらに、Bis-Trisゲルは常温保存でTris-Glycineより有効期限も長めのため、まだ使用したことがない人は、ぜひ試してみましょう。

・ゲル選択のポイント② 移動度チャートを見て、目的タンパク質の分離が最も良いゲルを選ぼう

SDS-PAGEでは、ゲル濃度によって移動度が異なります。そのため、表1の「移動度チャート」を参考に、ターゲットタンパク質の分子量付近の分離能が高く、かつターゲットタンパク質が中央付近に来るようなゲルを選びましょう。

なお、ターゲットタンパク質の分子量が不明な場合は、より広く分子量をカバーできるグラジエントゲルがおすすめです。

・ゲル選択のポイント③ ウェル数とゲル厚は、アプライ量も考えて選択

ウェル数は分析したいサンプル数に応じて決めますが、サンプル数だけで決めてしまうと困ることがあります。それは、「ウェルにサンプルが入りきらない場合」、タンパク質の濃度が低いと、アプライする容量を増やさなければなりませんが、ウェル数によっては入りきらないことがあります。ウェル数が多いほど、アプライできる容量も小さくなりますので、ウェル数は、次章の「サンプルアプライ量の決め方」も参考にして選びましょう。

サンプルアプライ量の決め方

ウェスタンブロッティングのサンプルアプライ量の目安は、以下のとおりです。

ウェスタンブロッティングにおけるSDS-PAGEサンプルアプライ量の目安:
粗サンプル:20 μg程度、精製タンパク質:100 ng程度

これらの値と、第2回で測定したタンパク質の濃度から、サンプルのアプライに必要な容量を決定しましょう。もちろん、ウェスタンブロッティングのバンド検出にはさまざまな要素が絡みますので、条件検討が必要になることもあります。まずは上記量になるようアプライし、結果を見てから最適量を決めましょう。

一方、ゲルの厚さやウェル数ごとに最大サンプルアプライ量が決まっています(表2)。

表2:最大サンプルアプライ量の目安

ウェルの形状 ゲルの厚さ 10ウェル 12ウェル 15ウェル 17ウェル
一般ウェル  1 mm 25 μL 20 μL 15 μL 15 μL
1.5 mm 37 μL n/a 25 μL n/a
くさび型ウェル  1 mm 60 μL 45 μL 35 μL 30 μL

※上記はInvitrogen™ Novex™、NuPAGE™、Bolt™シリーズのゲルの場合です。メーカーによって異なる可能性があるため、ご使用のゲルのアプライ量は必ず確認してください。

タンパク質濃度が薄い場合、濃い場合よりもアプライに必要な容量はもちろん多くなります。もし一般ウェルだと入りきらない場合は、より多くアプライできる1.5 mm厚か、くさび型ウェルのゲルがおすすめです(表2)。くさび型ウェルは、濃度が薄いサンプルの強い味方で、一般ウェルの倍以上の容量をアプライできます。くさび型ウェルのゲルを使用したい場合は、Invitrogen™ Bolt™ Bis-Trisゲルか、Novex™ Wedgewell Tris-Glycineゲルを選びましょう。

Bolt Bis-TrisゲルまたはNovex Tris-Glycineゲルのくさび型ウェル

図:Bolt Bis-TrisゲルまたはNovex Tris-Glycineゲルのくさび型ウェル

SDSサンプルバッファーの決め方


SDS-PAGE前には、サンプル中のタンパク質をSDS-PAGEができる状態に整えてあげる必要があります。すなわち、(1) SDSでサンプル中のタンパク質をマイナスにチャージさせ、(2) 還元剤でジスルフィド結合を切断した後、(3) 熱による変性を行います。
第1回でご紹介したように、タンパク質抽出試薬としてSDSサンプルバッファーを使用している場合は、(1)(2)のステップを省略できます。そうではない場合は、抽出したサンプルと、SDSサンプルバッファーを混ぜましょう。

ここで使用するSDSサンプルバッファーは、ゲルにより異なります。Bis-Trisゲル、Tris-Glycineゲル、Tris-AcetateゲルはSDSサンプルバッファー、またはLDSサンプルバッファー、Tris-Tricineゲルは専用のサンプルバッファーを使用します。

また、市販のSDS-PAGE用のサンプルバッファーに還元剤が含まれていない場合は、アプライ前に添加する必要があります。SDS-PAGEでは、還元剤として、2-メルカプトエタノール(2-ME)とDTTがよく使われます。

表3 SDS-PAGE用還元剤

還元剤 一般的なSDSサンプルバッファー中の濃度 メリット デメリット
DTT 50~100 mM程度 還元力が強く、少ない量で高い還元力がある 粉末製品の場合、調整に手間がかかる※
2-メルカプトエタノール(2-ME) 2.5~5%程度 液体で販売されていることが多いため、混合しやすい 毒物および劇物取締法の対象となっており、20 L以下の容器で≦0.1%は非該当ですが、≦10%で劇物、>10%で毒物となる

※あらかじめ500 mMに調整されたDTTも販売されています(こちらとこちら)。

マーカーの選び方


「ウェスタンブロッティング用のマーカー」で検索をすると、たいてい、着色済マーカーとウェスタンブロッティング検出用マーカーの2種類が現れます。さて、どちらを使用すればよいでしょうか。

答えは、どちらの使用もおすすめします。
着色済マーカーは転写後にメンブレン上でも目視できるため、転写されたかどうかの確認ができます。しかし着色済マーカーはウェスタンブロッティングで検出できないため、ウェスタンブロッティングで検出できるマーカーも泳動しておきましょう。

また、マーカーは、ターゲットタンパク質の分子量がカバーできるものを選ぶ必要があります。
表4は着色済マーカー一覧、表5はウェスタンブロッティング用マーカーの一覧です。ターゲットタンパク質の分子量から選択しましょう。

表4:着色済マーカー一覧

マーカー 分子量(kDa)
Invitrogen™ HiMark™ Pre-stained Protein Standard 500, 290, 240, 160, 116, 97, 66, 55, 40
Thermo Scientific™ Spectra™ Multicolor High Range Protein Ladder 300, 250, 180, 130, 100, 70, 50, 40
Novex Sharp Pre-stained Protein Standard 260, 160, 110, 80, 60, 50, 40, 30, 20, 15, 10, 3.5
Thermo Scientific™ Spectra Multicolor Broad range protein ladder 260, 140, 100, 70, 50, 40, 35, 25, 15, 10
Thermo Scientific™ PageRuler™ Plus Prestained Protein Ladder, 10 to 250 kDa 250, 130, 100, 70, 55, 35, 25, 15, 10
Invitrogen™ iBright™ Prestained Protein Ladder 250, 130, 95, 80, 70, 55, 43, 34, 30, 26, 15, 11
(ウェスタンブロッティングで80、30 kDaのバンドも検出可能)
Invitrogen™ SeeBlue™ Plus2 Pre-stained Protein Standard 198, 98, 62, 49, 38, 28, 17, 14, 6, 3
Thermo Scientific™ PageRuler™ Prestained Protein Ladder, 10 to 180 kDa 180, 130, 100, 70, 55, 40, 35, 25, 15, 10
Thermo Scientific™ Spectra™ Multicolor Low Range Protein Ladder 40, 25, 15, 10, 4.6, 1.7
その他、市販の着色済マーカー 分子量を必ず確認しましょう

 

表5:ウェスタンブロッティング検出用マーカーと分子量一覧

マーカー 分子量(kDa)
MagicMark XP Western Protein Standard  220, 120, 100, 80, 60, 50, 40, 30, 20
Thermo Scientific™ SuperSignal™ Molecular Weight Protein Ladder 150, 100, 80, 60, 50, 40, 30, 20
その他、市販のウェスタンブロッティング検出マーカー 分子量を必ず確認しましょう

 

表5のマーカーは、いずれもウェスタンブロッティングで検出できるマーカーですが、どちらもIgG結合サイトを持っており、ここに酵素標識抗体が結合することで検出されます。この2つのマーカーは泳動するだけで検出ができる簡単なタイプですが、市販のマーカーによっては、別途試薬が必要になるタイプもあります。そのため、購入前に、ウェスタンブロッティング用のマーカーの検出原理をしっかり確認しておきましょう。

着色済マーカーとウェスタンブロッティング検出用マーカーをそれぞれアプライすると、2ウェル必要になりますが、マーカーによっては、あらかじめ混ぜておき、1ウェルにアプライすることもできます。(例:Invitrogen™ MagicMark™ XP Western Protein Standard 5 μLとNovex™ Sharp Pre-Stained Standard 5 μLを混ぜて1ウェルにアプライできます。または、MagicMark XP Western Protein Standard 10 μLと、Invitrogen™ SeeBlue™ Pre-stained Standard 5 μLを混ぜて1ウェルにアプライも可能です)

電気泳動装置とパワーサプライの選択


泳動の主役になるのはサンプルやゲルですが、舞台も必要です。つまり、泳動装置とパワーサプライも用意しておきましょう。
まず、選んだゲルが泳動できる装置が必要です。表1のゲルはすべてInvitrogen™ Bolt™ Mini Gel TankまたはXCell SureLock™ Mini-Cellで泳動できます。

表6 ミニゲル用泳動装置

電気泳動装置 写真 最大泳動枚数 メリット
Bolt Mini Gel Tank 2枚 ・2枚を横に並べて泳動するため、泳動中にゲルが確認しやすい

・バッファータンクは転写にも利用可能

XCell SureLock Mini-Cell 2枚 ・Mini Gel Tankに比べて論文などの実績が多い

・バッファータンクは転写にも利用可能

次に、これらの泳動装置で泳動するためには、電源、つまりパワーサプライが必要になります。パワーサプライは、使用したいゲルの泳動条件(電圧値や電流値)が出力できるものを用意しましょう。泳動条件はゲルごとに異なりますので、あらかじめゲルのプロトコルからの確認をおすすめします。
Mini Gel TankとXCell SureLock Mini-Cell推奨の電源は、Invitrogen™ PowerEase™シリーズです。それぞれ最大電圧、電流値が異なるため、使用できるアプリケーションやゲル枚数に違いがあります(表6)。

表7 PowerEaseシリーズとアプリケーションごとの使い分け

パワーサプライ 最大出力値(電圧、電流、電力) 推奨アプリケーションとゲル枚数の目安
Invitrogen™ PowerEase™ Touch 120W Power Supply 300 V、500 mA、120 W SDS-PAGE:ミニゲル1~2枚
転写:ミニゲル1枚程度
Invitrogen™ PowerEase™ Touch 350W Power Supply 300 V、3A、350 W SDS-PAGE:ミニゲル1~4枚
転写:ミニゲル1~4枚
Invitrogen™ PowerEase™ Touch 600W Power Supply 500 V、3A、600 W SDS-PAGE:ミニゲル1~4枚
等電点電気泳動※:ミニゲル1~4枚
転写:ミニゲル1~4枚

※二次元電気泳動の一次元目の等電点電気泳動にはおすすめできませんのでご注意ください。この場合は、Invitrogen™ ZOOM™ Dual Power Supplyがおすすめです。

ウェスタンブロッティングのためのSDS-PAGEの選び方

SDS-PAGEのゲルやバッファー、マーカーにはさまざまな種類がありますが、ポイントを絞って選んでいけば迷うことも少ないはずです。ターゲットタンパク質に合ったものを、しっかりと選びましょう。

次回は、SDS-PAGEで分離したタンパク質を、ゲルよりも丈夫なメンブレンに移す作業、つまり転写方法についてご紹介します。

ウェスタンブロッティングの選び方シリーズはこちら:
ウェスタンブロッティングの製品選びにもう困らない!第1回:タンパク質の抽出方法
ウェスタンブロッティングの製品選びにもう困らない!第2回:総タンパク質定量キット
SDS-PAGEの選び方:ウェスタンブロッティングの製品選びにもう困らない!第3回
転写条件の選び方:ウェスタンブロッティングの製品選びにもう困らない!第4回
ブロッキング試薬のポイント:ウェスタンブロッティングの製品選びにもう困らない!第5回
抗体を選ぶときに知っておきたいこと:ウェスタンブロッティングの製品選び第6回
化学発光とマルチプレックス検出の選択ポイント:ウェスタンブロッティングの選び方 第7回

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