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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 転写条件の選び方:ウェスタンブロッティングの製品選びにもう困らない!第4回

転写条件の選び方:ウェスタンブロッティングの製品選びにもう困らない!第4回

Written by LatB Staff | Published: 03.09.2023


ウェスタンブロッティング向けの製品選びのポイント、4回目は転写についてです。

SDS-PAGEが終わった後は、ゲル内でタンパク質が分離した状態です。このまま抗体反応ができればよいのですが、ゲル内ではタンパク質が拡散しますし、抗体がゲルの中に入るのに時間を要しますし、扱いづらいです。そのため、別の支持体にタンパク質を移す作業を行いましょう。つまり、ゲルからメンブレンにタンパク質を移動させる、転写のステップです。

転写方法は、Towbinらが1979年にタンク式と呼ばれる装置を文献で発表して以来、複数の方法が開発され、試されてきました。転写方法だけでなく、転写バッファーやメンブレンなど、選択肢は多種多様にあります。

まずは、転写方法の選び方から確認していきましょう。

▼もくじ [非表示]

  • 転写方法の選び方
  • 転写バッファーの選び方
  • メンブレンの選び方
  • おまけ:転写効率の確認方法
  • ウェスタンブロッティングのための転写方法の選び方
    • 【無料ダウンロード】タンパク質解析ワークフローハンドブック

転写方法の選び方

現在、よく利用されている転写方法として、タンク式、セミドライ式、ドライ式があります。表1に、これらの3つの転写方法のメリットやデメリットなどを示しました。

表1:ウェスタンブロッティング 転写方法と装置の種類

転写方法 転写時間
/バッファー量
メリット デメリット 装置
タンク式※1 60分程度
/300 mL~1 L程度
(装置による)
・転写のムラが比較的起こりづらい
・高分子タンパク質でも転写効率が高くなりやすい
・冷却ができる
・バッファー量が多く必要で、準備に手間がかかる
・高い電流値と長い時間が必要
Invitrogen™ Mini Blot Module※2やInvitrogen™ XCell II™ Blot Module※2
セミドライ式 30分~60分
/100 mL程度
(装置による)
・バッファー量が少なくて済む ・高分子タンパク質では、タンク式より転写効率が低いことがある
・冷却ができない
Invitrogen™ Power Blotter System
ドライ式 7分程度
(装置による)
・バッファーが不要で、準備が簡単
・短時間で転写ができる
・誰でも同じ結果が得られやすい
・高分子タンパク質では、タンク式より転写効率が低いことがある

Invitrogen™ iBlot2™ System

Invitrogen™ Power Blotter System※3

※1:タンク式は、メーカーや企業によってウェット式(メンブレンやゲルをタンク内のバッファーに沈める転写方法)を指す場合もあれば、セミウェット式(モジュールを使用して、モジュール内にメンブレンやゲルをセットする転写方法)を指す場合もあります。この表では、より多く利用されているセミウェット式を紹介しています。
※2:Mini Blot Moduleを用いた転写にはInvitrogen™ Mini Gel Tankのバッファータンク、XCell II Blot Moduleを用いた転写にはInvitrogen™ XCell SureLock™ Mini-Cellのバッファータンクが別途必要です。泳動時にも同じバッファータンクを使用できるため、これらの装置を泳動装置かつ転写装置として使用すると便利です。
※3:Power Blotter Systemは、専用のスタック使用時のみ、ドライ式として転写が可能です。

表1に示した3つの方法のうち、特に高分子タンパク質は、冷却ができて時間の延長が可能なタンク式が、最も転写効率が高くなりやすいと言われています。しかし、タンク式はバッファーを多く使用し、準備に手間もかかりますし、高い電流値が必要です。これらのデメリットをカバーしたのがPower Blotter Systemなどのセミドライ式転写装置です。タンク式ほどバッファー量を必要とせず、また、ゲルの面以外には電流が流れず電極間の距離が短いため、発熱量も抑えやすいです。しかし、バッファーを用意する手間は変わりませんでした。

このセミドライ式からさらに進化したのがiBlot 2 Systemなどのドライ式です。ドライ式は、メーカーによっては「高速セミドライ式」とも呼ばれます。専用の固形化バッファーは、転写時の熱で溶解して転写バッファーの役割を果たすので、バッファーを用意する必要がなく、かつ短時間で転写ができます。

このように、転写方法にはそれぞれ一長一短があります。転写効率を優先させてタンク式にする場合もあるし、時間短縮を優先させてドライ式を選ぶ場合もあるでしょう。研究の優先順位に最も合った方法を選ぶことをお勧めします。

転写バッファーの選び方


タンク式とセミドライ式で転写する場合、転写バッファーが必須です。ドライ式でも、装置や条件によっては、転写前に電気泳動終了後のゲルを転写バッファーに浸すことで、転写効率が向上しやすくなります。
転写バッファーは、SDS-PAGEゲルに適用するものを表2から選びましょう。

表2:転写バッファー

転写バッファー 組成 適用ゲル
Invitrogen™ NuPAGE™ Transfer Buffer
+10~20%メタノール
25 mM Bicine、25 mM Bis-Tris (free base)、1 mM EDTA pH 7.2、10~20%メタノール※1 Bis-Trisゲル
Tris-Acetateゲル
Invitrogen™ Novex™ Tris-Glycine Transfer Buffer
+10~20%メタノール
12 mM Tris Base、96 mM Glycine pH 8.3、10~20%メタノール※1 Tris-Glycineゲル
Tris-Tricineゲル
Towbin転写バッファー 25 mM Tris、192 mM Glycine、10% メタノール※1 Tris-Glycineゲル

※1:メタノールは、エタノールで代用できます。

<メタノール濃度とSDS濃度について>
メタノールはメンブレンへのタンパク質結合力を高めるため、添加により転写効率を上げられる可能性があります。一方で、ゲルをシュリンクさせる効果もありますので、メタノール濃度が高いと逆にタンパク質がゲルから出づらくなり、転写効率が下がることも。また、1モジュール内(同じサンドイッチ内)で2枚同時に転写するときは、1枚目のゲルのタンパク質が2枚目のメンブレンまで転写されてしまわないように、20%が推奨されていることがあります。表2ではファーストチョイスのメタノール濃度を掲載していますが、転写効率が低いときは、メタノール濃度を変更すると改善することがあります。

また、表2に記載の転写バッファーにSDSを加えることでも、転写効率を改善できることがあります。転写効率が低いときは、まず終濃度0.01%~0.05%で試してみるのがお勧めです。SDSは、ゲル内のタンパク質をより均一にマイナス電荷にし、タンパク質を溶出させやすくします。一方で、メンブレンへの結合効率を低下させ、イオン強度が高くなることで熱も発生しやすくなります。

メタノールもSDSも、「何%がベスト」とは言えず、ゲル濃度や転写方法、ターゲットタンパク質の分子量などによっても異なりますので、結果を見ながら濃度を検討してみましょう。

このブログも参考になります:ウェスタンブロッティングにおける転写効率の最適化

メンブレンの選び方


最後に、検出まで長い付き合いになるメンブレンの選び方をご紹介しましょう。ウェスタンブロッティングで主に使われるのはニトロセルロースメンブレンとPVDFメンブレンです。

表3:ウェスタンブロッティングで使用されるメンブレン

メンブレン タンパク質結合力 メリット デメリット
PVDF 高 ・タンパク質結合力が高い
・破れにくい
・使用前にメタノール(エタノール)で親水化する必要がある※
・自家蛍光があるため、蛍光検出時は低蛍光PVDFメンブレンが推奨
ニトロセルロース 中 ・使用前の親水化処理が不要
・安価
・PVDFよりもタンパク質結合力が低い
・物理的な強度が低く、リプロービングには向かない場合がある

※高速セミドライ式(ドライ式)転写装置用のスタックでは、あらかじめPVDFが親水化処理されていることがあります。また、あらかじめ親水化されたPVDFメンブレンも市販されています。装置や製品によりますので、事前に確認しておきましょう。

PVDFメンブレンはニトロセルロースよりもタンパク質結合力が高く、物理的強度も高くて丈夫です。検出後にリプロービングをしたい場合はPVDFメンブレンを選ぶと良いでしょう。
一方で、PVDFメンブレンは使用前にメタノールやエタノールでの親水化が必要です(あらかじめ親水化されたPVDFメンブレンも市販されています)。親水化が必要なPVDFメンブレンでは、反応中に一度乾いてしまうと再度親水化が必要になるため、これを避けたい場合はニトロセルロースメンブレンを選びましょう。ただ、ニトロセルロースメンブレンは物理的な強度が低いため、リプロービングには向かない場合があります。

また、メンブレンの孔径は、0.45 μmや0.2 μmなど何種類か販売されています。低分子タンパク質は、孔径が大きいとメンブレンを通り抜けてしまいます。目安として20 kDa以下のタンパク質がターゲットの場合は、孔径0.2 μmのメンブレンを選びましょう。

おまけ:転写効率の確認方法

ところで、転写がうまくいったかどうか、どのように確認すればよいのでしょうか。
ウェスタンブロッティングはステップ数が多い手法です。抗原抗体反応を終えてターゲットタンパク質が検出できなかったとき、転写効率の低さを疑うのは少し早計です。なぜなら、検出には抗体反応や検出試薬との反応など、さまざまな要素が絡むため、転写効率が低かったとは限らないためです。

転写の確認には、メンブレン上の着色済みマーカーの目視確認、これが最も簡便な方法です。転写後は、ターゲットタンパク質と同じ分子量のマーカータンパク質がメンブレン上に見えているか、しっかり確認しておきましょう。

ウェスタンブロッティングのための転写方法の選び方

転写ではタンク式・セミドライ式・ドライ式が主な手法で、それぞれ一長一短があります。また、転写バッファーやメンブレンも、もちろん重要な要素。目的や優先順位に合ったものをしっかり選ぶことがウェスタンブロッティングを成功させる近道です。

次回は、メンブレン上のタンパク質がない部分を大量のタンパク質で覆いましょう。つまり、ブロッキングのポイントについてご紹介します。

ウェスタンブロッティングの選び方シリーズはこちら:
ウェスタンブロッティングの製品選びにもう困らない!第1回:タンパク質の抽出方法
ウェスタンブロッティングの製品選びにもう困らない!第2回:総タンパク質定量キット
SDS-PAGEの選び方:ウェスタンブロッティングの製品選びにもう困らない!第3回
転写条件の選び方:ウェスタンブロッティングの製品選びにもう困らない!第4回
ブロッキング試薬のポイント:ウェスタンブロッティングの製品選びにもう困らない!第5回
抗体を選ぶときに知っておきたいこと:ウェスタンブロッティングの製品選び第6回
化学発光とマルチプレックス検出の選択ポイント:ウェスタンブロッティングの選び方 第7回

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