フローサイトメトリーで解析のためにゲーティングする際に良く実施されるダブレット除去。同じパラメーターのArea(もしくはWidth)とHeightでドットプロットを展開する事で、複数個の細胞が固まったプロット(ダブレット、トリプレット)と単離細胞群(シングレット)を区別してゲーティングする事ができます。しかしながら、ゲーティングの理屈は分かっていても本当にシングレットのプロットは単離された細胞でダブレットの細胞群は複数の細胞がくっついているのかに関しては、“ほんまかいな?”という疑問が付きまとい、実際に見てみないと信じられないという方も多いかと思います。
そこで測定した細胞の写真を撮影しながらフローサイトメトリーができるフローサイトメーター、Invitrogen™ Attune™ CytPix™ Flow Cytometerを使い、シングレットとダブレットのプロットの細胞たちが言われている通りの集団なのか、実際の姿を写真で確認してみましょう!
▼こんな方におすすめです!
・フローサイトメトリーユーザー
・フローサイトメトリー初心者
・フローサイトメトリーの原理を学びたい方
・ゲーティングした細胞が理屈通りの姿か気になっていた方
▼もくじ [非表示]
材料と測定方法
・細胞
Jurkat細胞
・測定装置
Attune CytPix Flow Cytometer (製品番号A48652)
・手順
① EtOHで固定したJurkat細胞を1.0×106 cells/mLで調製した溶液を200 µL用意
② Attune CytPix Flow Cytometerの測定速度を100 µL/minに設定し100 µLの細胞溶液を測定
③ Attune CytPix Flow Cytometer付属のソフトウエアでフローサイトメトリー解析と撮影した細胞の写真を確認
ダブレット除去の方法
フローサイトメトリーでは、流れてきた粒子(細胞)がレーザーを通過して得られるシグナルを検出器でパルス生成し、それが結果としてプロットされていきます。生成されるパルスをX軸に時間、Y軸に得られるシグナル強度として描くと、Width(W):粒子がレーザーを通過するのにかかる時間、Height(H):パルスの最大値、Area(A):パルスの面積となり図 1のようになります。
図1. 検出器で生成されるシグナルパルス
では、大きさが異なる細胞やダブレットがレーザーを通過する際にどのようなパルス形成をするでしょうか。アニメーションで確認してみます。
通常のシングル細胞
通常の細胞よりもサイズが2倍大きい細胞
ダブレット
これらをまとめたものと、その結果をX軸:Area、Y軸:Heightでプロットしたドットプロットの図が次の図 2となります。
図2. シングレットとダブレットのプロット
※こちらの図ではFSC-A、FSC-Hでプロットしていますが、SSCや蛍光を用いても同様です。
細胞がシングレットであれば、AreaとHeightで一次関数的な関係を示す楕円で囲った領域に大きさに応じてプロットされていきます。
しかし、細胞同士がくっ付いているいわゆるダブレットやトリプレットといった細胞は、Heightの値と比較してAreaは小さい値として出るため楕円で囲った一次関数的領域よりも右側にプロットが出る特長があります。
この右側に出た領域のプロットを避けて楕円で囲った領域のシングレット細胞の領域だけを選んでゲートする事を“ダブレット除去”と呼びます。
実際にシングルとダブレット領域の細胞の写真を見てみよう
実際に、Attune CytPix Flow Cytometerで測定したJurkat細胞のプロットで、ご紹介した方法によるシングレット細胞とダブレット細胞のゲーティングを行いました。Attune CytPix Flow Cytometerはゲートした領域の細胞の姿を実際に写真で確認することができます。次の動画で、ゲーティングの様子を一緒に確認しシングレットとダブレットをゲートできたか写真で確認しましょう。
次の図3に、動画でゲーティングしたプロットと細胞の写真の一部をまとめました。
図3. プロットと実際の細胞の写真
ご覧いただきましたように、シングレット細胞をゲートする領域“Single cell”でゲートした細胞の写真はいずれも単離細胞である事に対して、ダブレットをゲートする領域“Doublet”でゲートした細胞の写真はいずれも、複数の細胞が連なっているという様子を確認する事ができました。
まとめ
ご紹介した方法でゲーティングを行い、実際にゲートした領域の細胞を確認することで、シングレット領域の細胞は単細胞、ダブレット領域の細胞では複数の細胞が連なっているという様子が実際の写真で確認することができました。今までこのダブレット除去に関して、理屈の上ではダブレットゲートの領域は複数の細胞が連なっているという事は分かっていました。しかし、実際にフローサイトメトリー上のプロットと写真データの双方から確認するという事は技術的に難しかったため確認できませんでした。今回、Attune CytPix Flow Cytometerを使う事でフローサイトメトリーの主張するデータと細胞の形状情報を一致させることができました。ダブレットに限らず、貪食や細胞周期など、理屈としてフローサイトメトリー上で示されるデータに画像情報を付与することで測定の精度や確度を高める事ができると考えられます。
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