あなたのアレルギー症状をチェック
大人の食物アレルギーは、花粉アレルギーが発症に関係するものや運動をすることが引き金になるものなど、思わぬことが発症に係ることがあります。代表的な花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)や口腔アレルギー症候群、食物依存性運動誘発アナフィラキシーなどについてご紹介します。
食物アレルギーは一般的には子どもに多いとされていますが、実際には大人でも食物アレルギーの発症は少なくありません。即時型食物アレルギー症状で医療機関を受診した患者さんを対象にした調査では0歳児が31.5%で最も多く、以降加齢に伴い減少し、18歳以上では4.7%と報告されております1)。
大人発症の食物アレルギーの原因は、果物・野菜、小麦、甲殻類などが多く(図)、子どものアレルギー原因食物として頻度の高い鶏卵や牛乳は、大人ではその頻度は低い傾向にあります。ただし、子どもの頃に発症した食物アレルギーが成長しても改善せず、大人になっても継続する場合には、鶏卵や牛乳が原因となる場合もあります。
リンゴ、モモ、野菜、大豆、小麦、甲殻類など
(図)大人の食物アレルギーの原因食品の分布
データ提供:相模原病院 福冨友馬先生
相模原病院アレルギー科を2009~2011年の間に受診した大人の食物アレルギー症例の原因食物
果物・野菜(豆乳・大豆アレルギー含む)が最も頻度が多く、次に小麦、甲殻類と続いている。
大人の食物アレルギーは、乳幼児期に発症するものと比べて症状の起こり方が多様であることが特徴とされ、口腔アレルギー症候群(OAS:oral allergy syndrome)や食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA: food-dependent exercise-induced anaphylaxis)など、特殊な即時型症状が多く見られる傾向があります。
さらに、食物関連アレルギーとして、実際に食べた食物と原因が異なり気付きにくい魚に寄生するアニサキスによるアレルギーやお好み焼き粉に潜むダニによるアレルギー(パンケーキ症候群)なども知っておきたい食物関連アレルギーです。
このページでは花粉-食物アレルギー症候群:PFAS(pollen-food allergy syndrome)、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)、アニサキスアレルギー、パンケーキ症候群などについて詳しくご紹介します。
大人の食物アレルギーでは、食べた食物と原因が異なることも多いため「アレルギーかも?」と思ったら医師に相談しましょう。
アレルギーかも?と思ったら医師に相談しましょう。
日本アレルギー学会運営サイトにて、全国の拠点病院やアレルギー専門医を検索できます。
大人の食物アレルギーで多いのはPFASです。特定の果物や野菜によって起こるアレルギーで、のどやくちびるなど口腔周辺を中心にかゆみやイガイガなどの症状「口腔アレルギー症候群:OAS(oral allergy syndrome)」を引き起こします。花粉に含まれるアレルギーを起こすタンパク質と似たタンパク質を果物や野菜が持っているために花粉症の人の一部がこれらの食物を食べたときにアレルギー症状を引き起こします。このような反応を「交差反応」といい、花粉症の人がこの交差反応によって果物や野菜などの食物に対してアレルギー症状を起こすことを「花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)」と呼ばれます。
大人の食物アレルギーで果物や野菜が増えている背景には、増加する花粉症によるPFASの発症があると考えられています。
PFASは花粉症の原因を特定することが治療の第一歩です。果物や野菜を食べて口の周りがイガイガなどする場合は医師に相談しましょう。
くちびる、舌、のどなどで起こる、かゆみ(チクチク、イガイガ)、腫れ
果物・野菜類、大豆製品など
データ提供:相模原病院 福冨友馬先生
食物依存性運動誘発アナフィラキシーは大人の食物アレルギーでよく見られる症状の一つです。この病態では、特定の食物を摂取するだけでは症状は現れませんが、運動をすることによってアレルギー症状が発症しやすくなります。通常、アレルギーを持っている食物を摂取後2時間以内、長くて4時間以内に運動した場合にアレルギー症状を発症します。発症機序としては、運動によって腸管での食物の吸収が促進されることが考えられています3)。運動の強度が高いほど、症状が誘発される可能性が高まります。また、軽い運動(歩行や自転車など)でも症状が誘発されることがあります。
代表的な原因は小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA:Wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis)で、その他、エビやカニなどの甲殻類、果物が原因食物となります。
また、症状を誘発する因子は運動以外に、飲酒、入浴、ストレスなど複数の要因がありますが、必ずしも症状が引き起こされるとは限りません。
じんましん、呼吸困難、アナフィラキシーなど
小麦、果物、甲殻類(エビ・カニ)など
特定の食物摂取
食物摂取だけでは発症しにくい
食物摂取後の二次的要因
運動、散歩や入浴、飲酒、NSAIDs服用にも注意
魚介類を食べてアレルギー様症状が出た場合、魚アレルギーやアニサキスアレルギー、ヒスタミン中毒が考えられますが大人では魚介類に寄生するアニサキスが原因でアレルギー症状を引き起こす例が多いです。
アニサキスは、サバ、アジ、サケ、イカなど魚介類に寄生する寄生虫です。
アニサキスアレルギーは、摂取後にすぐ発症する場合もあれば、数時間後に発症する場合もあり、症状の発症までの時間には幅があります。症状としては、かゆみやじんましんなど皮膚症状や、消化器症状、呼吸器症状などです。
アニサキスアレルギーは、主にアニサキスが寄生した魚介類の生食で起こります4)。
じんましん、呼吸器症状(喘鳴、咳、鼻汁など)や、消化器症状(下痢、腹痛、嘔吐など)
アニサキスが寄生したサバ、イカなどの魚介類の生食
また、魚アレルギーと間違いやすい病態としてヒスタミン中毒があります。ヒスタミン中毒は、マグロやサンマ、サバなどの赤身魚の鮮度が落ちるとヒスタミンが増加し、ヒスタミン中毒を引き起こすことがあります。主な症状としては顔面の紅潮、頭痛、吐き気、じんましんなどのアレルギー様症状が見られます。ヒスタミン中毒は食中毒に分類されます。
小麦粉やお好み焼き、ホットケーキミックスなどの粉製品は、開封後の保存方法が適切ではない場合、ダニが大量に繁殖することがあります。ダニが繁殖した粉製品で作られたお好み焼きなどを食べた時に、ダニが原因でアレルギー症状を起こすことがあります。お好み焼きやホットケーキミックスなどの粉製品は開封した後は、早めに食べる、保存する場合は密閉した容器へ入れて冷蔵保存が好ましいです。
じんましん、呼吸器症状(喘鳴、咳、鼻汁など)や、消化器症状(下痢、腹痛、嘔吐など)
ダニが繁殖したお好み焼き粉、ホットケーキミックスなどの粉製品
福冨友馬先生
国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター
アレルゲン研究室 室長
食物アレルギーでは、普段は軽めの症状であっても、体調不良時に突然アナフィラキシーを引き起こしたりすることもあります。大人の食物アレルギーでは、過労、運動やお酒などがきっかけとなって発症することもあります。
また、小さい頃にアレルギーを経験したことがある場合、成長に伴い食べられるようになっている場合もありますのでアレルギーの専門医を受診することをおすすめします。
大人の食物アレルギーは、いったん発症すると完全に治ることは少なく、原因となる食品を避けることが基本となります。
そのため問診やアレルギー検査などによる正しい診断が重要となります。
また、大人の食物アレルギーでは発症や増悪に、いろいろな要素が関係しますので医師の指導のもと対策を実施しましょう。
例えば
また、過労や睡眠不足、ストレスなど体調が万全でないときに症状が出やすくなりますので生活習慣を見直し、体調を整えておくことも大切です。
大人の食物アレルギーでは、FDEIA(食物依存性運動誘発アナフィラキシー)など、同じもの食べても症状が出たり出なかったりすることも多いため症状や気になることがあったら、自分がどのような食べ物を食べてどのような症状がでるのか記録を取ることが大切です。
診断に役立つ問診項目
食物アレルギーでは原因を特定することが大切です。そのためには、問診により詳細な食事内容とアレルギー症状の関連を明らかにする必要があります。さらに、アレルギー反応を引き起こす「IgE抗体」の有無を調べる血液検査、プリックテスト(アレルゲンを少量皮膚に入れて反応を見る検査方法)、食物除去テスト、食物経口負荷試験などのアレルギー検査を行い、総合的に医師が診断します。
アレルギー症状は個人差がありますが、場合によってはアナフィラキシーショックなど強い症状を引き起こす場合もあるため、アレルギー検査をすることで、「こういう時に症状が出やすい」、「関連性がある原因」など事前に対処しやすくなることが大きなメリットといえます。
ネットなどで簡単に検査できる市販のアレルギー検査もありますが、食物アレルギーは強い症状を引き起こす場合もあるためアレルギーの専門医へ相談しましょう。
アレルギー性鼻炎と感染症には共通の症状もあります
小さなお子さんは、自分で症状を訴えることが難しいです。こんなしぐさや症状は、アレルギー性鼻炎に関連しているかもしれません3)。
ウイルスがついた手で目鼻をこすったり触ったりした場合にもウイルス感染する可能性があります2)。
くしゃみ1回で発生する飛沫の量は咳の10倍以上。アレルギー性鼻炎にウイルス感染が加わると周りへの感染拡大のリスクになってしまいます。
など
アレルギーかも?と思ったら医師に相談しましょう。
日本アレルギー学会運営サイトにて、全国の拠点病院やアレルギー専門医を検索できます。
1) アレルギー 69,701-5,2020
2) 食物アレルギー診療ガイドライン2021
3) J Appl Physiol(1985):82:571-6,1997
4) Allergol Int. 2024 Jan;73(1):171-173
独立行政法人国立病院機構 相模原病院
臨床研究センター アレルゲン研究室
室長 福冨友馬 先生
2004年広島大学医学部卒業。 沖縄県立北部病院を経て2006年から相模原病院アレルギー科に勤務、2009年同臨床研究センター研究員。 2014年順天堂大学連携大学院 客員准教授併任。2012年より現職。
2024年9月時点