ブラジルナッツなどのナッツ類に対するアレルギーは一般的で、多くの場合重度の症状を示します。これらのタイプのアレルギーは通常2歳までに発症し、アレルギーを起こすナッツ類の数は、年齢とともに増加することがあります1。ナッツ類のアレルギーを持つ人の約30%は、複数のナッツに対するアレルギーを持っています2。また、ピーナッツは実際にはマメ科植物ですが、ピーナッツアレルギーを持つ人の約20~30%は、1種類以上のナッツにアレルギーを持っています2。また、残念ながら、他の食物アレルギーと比較して、これらのアレルギーを克服できる可能性は低く、感作された人の約10%に限られています1。
ナッツ類アレルギーの大半は、クルミ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、ペカンナッツ、ハシバミ(ヘーゼルナッツ)、マカダミアナッツ、ブラジルナッツ、松の実の9種類に起因します1。パラナッツとも呼ばれるブラジルナッツは、実際には南米の樹木から採れる食用の種子で、ココナッツのような固い殻の果実を実らせ、果実の大きさは直径約8~18 cm(約3~7インチ)になります。これらの果実は約2.25 kg(5ポンド)の重量があり、通常12~24個の種子(ブラジルナッツ)が柑橘類の房のように配置されています。果実は熟すと地面に落ち、そこで収穫されます。そこから3つの面を持つ種子が取り出され、乾燥、洗浄され、殻のまま販売されます3。
ブラジルナッツは、タンパク質、食物繊維、チアミン、銅、マグネシウムが豊富です3。他のナッツ類と比較すると、ブラジルナッツはセレンの最高の供給源であり、とりわけ免疫系の調節、甲状腺の調節、酸化ストレスからの保護に寄与します4。ブラジルナッツオイルは、シャンプー、石鹸、ヘアコンディショナー、およびスキンケア製品に使用されており、ナッツは生で、または湯がいて食べられるほか、多くの場合ミックスナッツ製品に含まれています1,3。英国では、ナッツアレルギーのある人の24~33%でブラジルナッツに対する感作が見られますが、米国で報告されている数字は5%未満です1。
ブラジルナッツは生または茹でて食されるほか、よくミックスナッツ製品に含まれています1,3。さらに、ブラジルナッツオイルは、シャンプー、石鹸、ヘアコンディショナー、およびスキンケア製品に使用されています3。
次の食品には、ナッツ類や種子が含まれている場合があります7。焼き菓子、ベーキングミックス、バーベキューソース、ペストソース(具材をすりつぶしてペースト状にしたソース)、シリアル、チョコレート、プラリネ、クラッカー、ドレッシング、グレービー、フレーバーコーヒー、冷凍デザート、ミューズリー、ヌガー、アーモンドチキン、パッタイ、チリアーモンド、マスのアーモンド焼き、ジャンドゥーヤ(ヘーゼルナッツ入りチョコレート)、マジパン(アーモンドペースト)、アーモンドミルク、ナッツミルク、ナッツオイル、スプレッド(チーズスプレッド、ヘーゼルナッツを含むヌテラなどのチョコレートナッツスプレッドなど)、ベジタリアン料理、インドカレー、アジア料理、パスタ、リキュール(アマレットやフランジェリコなど)、天然香料および抽出物(アーモンド抽出液など)、サラダ、トレイルミックス、スナック食品。
また、「天然フレーバー」や「植物由来」という言葉は、ナッツやナッツの香料が入っていることを示している可能性があります5。アジア料理のレストランでは料理にナッツや種子を使用することが多いため、特に問題となる場合があります。また、鍋は複数の食事の調理に使用される可能性があるため、混入のリスクをはらんでいます8。
食品以外でナッツ類を含む可能性があるものには、次のものがあります7:ビーンバッグ(布地の中に穀物や粒を詰めたもの。お手玉やクッションとして使用されている)、鳥のエサ、化粧品、ヘアケア製品、日焼け止め、マッサージオイル、ペットフード。
ブラジルナッツアレルギーを持つ人の中には、無関係に見える他の食物を食べたときに症状を発症する人もいます。これは交差反応と呼ばれ、身体の免疫系が異なる物質中のタンパク質や成分を構造的に類似しているか生物学的に関連していると判断し、反応を引き起こすときに発生します。ブラジルナッツとの交差反応をもっとも起こしやすいのは、ナッツ類、果物、大豆、野菜、マメ科植物などの植物性食物です7。
ブラジルナッツやその他の関連する生の果物、生野菜、ナッツ類を食べた後に、口や耳のかゆみ、喉のイガイガ、口のじんましん、唇、口、舌、喉の腫れが見られる場合は、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)(口腔アレルギー症候群(OAS)とも呼ばれる)に罹患している可能性があります。このような症状は、食物や花粉に含まれる類似するタンパク質や成分に対する免疫系の反応によって引き起こされます6。これはきわめて一般的で、ある研究では、アレルギー性鼻炎(花粉症)を持つ小児の約1/4がPFASにも罹患していることが示唆されています9。ブラジルナッツを食べたときにPFASを引き起こす可能性のある一般的な花粉アレルギーには、樹木(ブナ目カバノキ科花粉など)、イネ科植物、雑草などがあります7。
※他に感作または交差反応を起こしうるアレルゲンは人により異なるため、自己判断せずに必ず医師の診断を受けることが必要です。
ブラジルナッツはさまざまな種類のタンパク質で構成されています。すべてのタンパク質に異なる特性があり、症状を引き起こすリスクレベルも異なります。原因となるタンパク質が高温によって分解される場合には、よく加熱(調理/ロースト)されたブラジルナッツなら食べられる人もいます。原因となるタンパク質が熱に対して安定であるものの場合には、アナフィラキシーとも呼ばれる重篤な症状を引き起こす可能性があるため、ブラジルナッツを完全に避ける必要があります。個人個人のリスクプロファイルは、ブラジルナッツに含まれるどのタンパク質(アレルゲンコンポーネント)に対してアレルギーがあるかによって異なります7。
ナッツ類アレルギーの症状は、通常は摂取後数分以内に起こり、じんましんからアナフィラキシーまでのさまざまな症状が現れます。アナフィラキシーは生命を脅かす可能性のある反応で、呼吸困難になり、身体がショック状態にいたることがあります2,5。実際、日本でのナッツ類アレルギーは、ショック症状を引き起こした原因食物として鶏卵、牛乳について第3位で17.4%を占めています10。多くの人がナッツは見分けがつかないため、この重症度は特に問題となります。たとえば、ある研究では、アレルギーのあるナッツのすべての形態を正しく特定できたのは、ナッツ類アレルギーを持つ参加者の半数のみでした1。
ナッツ類アレルギーの症状には、以下のものがあります5。
また、ナッツ類によるアレルギー反応は、ブナ目カバノキ科花粉との交差反応により、口腔アレルギー症候群(OAS)(花粉-食物症候群(PFS)や花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)とも呼ばれる)として現れることもあります2,6。
OASの症状には以下のものがあります6。
アレルギー症状の原因を知ることは、治療や対策への第一歩です。自己判断せず、きちんと医療機関を受診して医師による適切な診断を受ける必要がありますので、医師に相談するために症状を記録しておきましょう。症状の記録とともに、特異的IgE血液検査または皮膚プリックテストが役立ちます。アレルギーと診断された場合は、医師の指導に従ってください。