本コンテンツは、当社グローバルサイトのAllergen Fact Sheetsを和訳したものです

カシューナッツ Allergen Facts, Symptoms, and Treatment

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カシューナッツについて

カシューナッツなどのナッツ(木の実)類に対するアレルギーは一般的で、多くの場合重度の症状を示します。これらのタイプのアレルギーは通常2歳までに発症し、アレルギーを起こすナッツ類の数は、年齢とともに増加することがあります1。ナッツ類のアレルギーを持つ人の約30%は、複数のナッツに対するアレルギーを持っています2。また、ピーナッツは実際にはマメ科植物ですが、ピーナッツアレルギーを持つ人の約20~30%は、1種類以上のナッツ(木の実)にアレルギーを持っています2。また、残念ながら、他の食物アレルギーと比較して、これらのアレルギーを克服できる可能性は低く、感作された人の約10%に限られています1

ナッツ類アレルギーの大半は、クルミ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、ペカンナッツ、ハシバミ(ヘーゼルナッツ)、マカダミアナッツ、ブラジルナッツ、松の実の9種類に起因します1。豊富なタンパク質を持つカシューナッツは、ウルシ科の常緑低木から採れ、一般的にナッツと呼ばれていますが、実際には、厚く湾曲した豆のような形をした食用種子です3。カシューナッツは栄養価が高いものの、残念ながらアレルギーの原因になることが多いです。米国の記録によれば、ナッツアレルギーの患者さんのうち20%がカシューナッツアレルギーであり、これはナッツアレルギーの中で2番目に多い原因でした1。日本では、ナッツ類は食物アレルギーの原因として増加傾向で全体の中で第4位(8.2%)であり、年齢別の新規発祥の原因食物として1,2歳で第3位、3~6歳では第1位を占めます11。中でも、カシューナッツは、原因食物別のショック発生率が18.3%でもっとも高いと報告されています11。平成25年9月よりカシューナッツは食品表示法の特定原材料に準ずるものとして推奨表示品目に加わっています11

カシューナッツはどのようなものに使われていますか?

カシューナッツは、アジア料理、製パン製品、スイーツ、アイスクリーム、バター、ケーキ、チョコレート、ペストソースなどに含まれています1,8。さらに、タイ料理、インド料理、中国料理には、カシューナッツを含むものが多くあります8。また、食感を楽しむために、比較的高価な松の実の代替品として使用されることもあります4

次の食品には、ナッツ類や種子が含まれている場合があります4。焼き菓子、ベーキングミックス、バーベキューソース、ペストソース(具材をすりつぶしてペースト状にしたソース)、シリアル、チョコレート、プラリネ、クラッカー、ドレッシング、グレービー、フレーバーコーヒー、冷凍デザート、ミューズリー、ヌガー、アーモンドチキン、パッタイ、チリアーモンド、マスのアーモンド焼き、ジャンドゥーヤ(ヘーゼルナッツ入りチョコレート)、マジパン(アーモンドペースト)、アーモンドミルク、ナッツミルク、ナッツオイル、スプレッド(チーズスプレッド、ヘーゼルナッツを含むヌテラなどのチョコレートナッツスプレッドなど)、ベジタリアン料理、インドカレー、アジア料理、パスタ、リキュール(アマレットやフランジェリコなど)、天然香料および抽出物(アーモンド抽出液など)、サラダ、トレイルミックス、スナック食品。

また、「天然フレーバー」や「植物由来」という言葉は、ナッツやナッツの香料が入っていることを示している可能性があります6。アジア料理のレストランでは料理にナッツや種子を使用することが多いため、特に問題となる場合があります。また、鍋は複数の食事の調理に使用される可能性があるため、混入のリスクをはらんでいます9

食品以外でナッツ類を含む可能性があるものには、次のものがあります4:ビーンバッグ(布地の中に穀物や粒を詰めたもの。お手玉やクッションとして使用されている)、鳥のエサ、化粧品、ヘアケア製品、日焼け止め、マッサージオイル、ペットフード。

受診の重要性について
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感作されている可能性のあるアレルゲンは他にもありますか?

カシューナッツアレルギーを持つ人の中には、無関係に見える他の食物を食べたときに症状を発症する人もいます。これは交差反応と呼ばれ、身体の免疫系が異なる物質中のタンパク質や成分を構造的に類似しているか、生物学的に関連していると判断し、反応を引き起こすときに発生します。カシューナッツとの交差反応をもっとも起こしやすいのは、ナッツ類、果物、大豆、野菜、マメ科植物などの植物性食物です4

カシューナッツとピスタチオには類似したアレルギー誘発性タンパク質があるため、カシューナッツに反応する人はピスタチオにも反応する場合があり、その逆も同様です4。カシューナッツアレルギーを持つ人は、スパイスとして使われているピンクペッパー(ブラジルコショウ、ローズペッパー、クリスマベリー)に対するアレルギーのリスクが高い場合もあります。(ピンクペッパーはブラックペッパーとは異なります5。)

カシューナッツやその他の関連する生の果物、生野菜、ナッツ類を食べた後に、口や耳のかゆみ、喉のかゆみ、口のじんましん、唇、口、舌、喉の腫れがみられる場合は、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)(口腔アレルギー症候群(OAS)とも呼ばれる)を発症している可能性があります。このような症状は、食物や花粉に含まれる類似のタンパク質や成分に対する免疫系の反応によって引き起こされます7。これはきわめて一般的で、ある研究では、アレルギー性鼻炎(花粉症)を持つ小児の約1/4がPFASにも罹患していることが示唆されています10。カシューナッツを食べたときにPFASを引き起こす可能性のある一般的な花粉アレルギーには、樹木(ブナ目カバノキ科花粉など)、イネ科植物、雑草などがあります4

 

※他に感作または交差反応を起こしうるアレルゲンは人により異なるため、自己判断せずに必ず医師の診断を受けることが必要です。

完全にカシューナッツの摂取を避ける必要がありますか?

カシューナッツはさまざまな種類のタンパク質で構成されています。すべてのタンパク質に異なる特性があり、症状を引き起こすリスクレベルも異なります。原因となるタンパク質が高温によって分解される場合には、よく加熱(調理/ロースト)されたカシューナッツなら食べられる人もいます。原因となるタンパク質が熱に対して安定であるものの場合には、アナフィラキシーとも呼ばれる重篤な症状を引き起こす可能性があるため、カシューナッツを完全に避ける必要があります。個人個人のリスクプロファイルは、カシューナッツに含まれるどのタンパク質(アレルゲンコンポーネント)に対してアレルギーがあるかによって異なります4

アレルゲンコンポーネント:Ana o 3(カシューナッツ由来)

カシューナッツに含まれるタンパク質のひとつであるAna o 3(読み方:アナオースリー)に対する特異的IgEを検査することができます。Ana o 3の特性は以下の通りです。

  • 重篤症状やアナフィラキシーのリスクを引き起こす危険性のある成分です。
  • Ana o 3が関与するカシューナッツアレルギーの場合、Ana o 3が熱や消化に対して強い特性をもつため、調理したカシューナッツやローストしたカシューナッツ、生のカシューナッツで症状を引き起こす可能性があります。
アレルギーの原因は1つではありません
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一般的な症状

ナッツ類アレルギーの症状は、通常は摂取後数分以内に起こり、じんましんからアナフィラキシーまでのさまざまな症状が現れます。アナフィラキシーは生命を脅かす可能性のある反応で、呼吸困難になり、身体がショック状態にいたることがあります2,6。実際、日本でのナッツ類アレルギーは、ショック症状を引き起こした原因食物として鶏卵、牛乳について第3位で17.4%を占めています12。多くの人がナッツは見分けがつかないため、この重症度は特に問題となります。たとえば、ある研究では、アレルギーのあるナッツのすべての形態を正しく特定できたのは、ナッツ類アレルギーを持つ参加者の半数のみでした1

ナッツ類アレルギーの症状には、以下のものがあります6

  • 腹痛、痙攣、吐き気、嘔吐
  • 下痢
  • 嚥下困難
  • 口腔、喉、目、皮膚、その他の部位のかゆみ
  • 鼻づまり、鼻水
  • 息切れ
  • アナフィラキシー(生命を脅かす可能性のある事象)

また、ナッツ類によるアレルギー反応は、ブナ目カバノキ科花粉との交差反応により、口腔アレルギー症候群(OAS)(花粉-食物症候群(PFS)や花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)とも呼ばれる)として現れることもあります2,7

OASの症状には以下のものがあります7

  • 口のかゆみ、じんましん
  • 喉のイガイガ
  • 口唇、口、舌、喉の腫れ
  • 耳のかゆみ

自分がアレルギーかどうかを知るにはどうすればよいですか?

アレルギー症状の原因を知ることは、治療や対策への第一歩です。自己判断せず、きちんと医療機関を受診して医師による適切な診断を受ける必要がありますので、医師に相談するために症状を記録しておきましょう。症状の記録とともに、特異的IgE血液検査または皮膚プリックテストが役立ちます。アレルギーと診断された場合は、医師の指導に従ってください。

  1. Weinberger T, Sicherer S. Current perspectives on tree nut allergy: a review. J Asthma Allergy. 2018 Mar 26;11:41-51. doi: 10.2147/JAA.S141636. PMID: 29618933; PMCID: PMC5875412. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5875412/pdf/jaa-11-041.pdf.
  2. McWilliam V, Koplin J, Lodge C, Tang M, Dharmage S, Allen K. The Prevalence of Tree Nut Allergy: A Systematic Review. Curr Allergy Asthma Rep. 2015 Sep;15(9):54. doi: 10.1007/s11882-015-0555-8. PMID: 26233427.
  3. Encyclopedia Britannica [Internet]. Chicago: Encyclopedia Britannica Inc.; 2020 Apr 7. Available from: https://www.britannica.com/print/article/97939.
  4. EAACI, et al. Molecular allergology user’s guide. Pediatric Allergy Immunol. 2016 May;27 Suppl 23:1-250. do: 10.1111/pai.12563. PMID: 27288833. (245-254 p.) Available from: http://www.eaaci.org/documents/Molecular_Allergology-web.pdf.
  5. Food Allergy Research & Education [Internet]. McLean, VA: Food Allergy Research & Education; 2020. Available from: https://www.foodallergy.org/living-food-allergies/food-allergy-essentials/common-allergens/tree-nut.
  6. American College of Allergy, Asthma & Immunology [Internet]. Arlington Heights, IL: American College of Allergy, Asthma & Immunology; 2014. Available from: https://acaai.org/allergies/types/food-allergies/types-food-allergy/tree-nut-allergy.
  7. American College of Allergy, Asthma & Immunology [Internet]. Arlington Heights, IL: American College of Allergy, Asthma & Immunology; 2014. Available from: https://acaai.org/allergies/types/food-allergies/types-food-allergy/oral-allergy-syndrome.
  8. Van der Valk JP, Dubois AE, Gerth van Wijk R, Wichers HJ, de Jong NW. Systematic review on cashew nut allergy. Allergy. 2014 Jun;69(6):692-8. doi: 10.1111/all.12401. Epub 2014 Apr 15. PMID: 24734868. Available from:  https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/all.12401Va
  9. Lomas JM, Järvinen KM. Managing nut-induced anaphylaxis: challenges and solutions. J Asthma Allergy. 2015 Oct 29;8:115-23. doi: 10.2147/JAA.S89121. PMID: 26604803; PMCID: PMC4631427. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4631427/pdf/jaa-8-115.pdf.
  10. Roberts, G., Xatzipsalti, M., Borrego, L., Custovic, A., Halken, S., Hellings, P., Papadopoulos, N., Rotiroti, G., Scadding, G., Timmermans, F., Valovirta, E. Paediatric rhinitis: Position paper of the European Academy of Allergy and Clinical Immunology. Allergy. 2013 Sep;68(9):1102-16.
  11. 日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会・海老澤元宏・伊藤浩明・藤澤隆夫監修.食物アレルギー診療ガイドライン2021.協和企画.2021
  12. 令和3年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書(消費者庁)https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_220601_01.pdf