本コンテンツは、当社グローバルサイトのAllergen Fact Sheetsを和訳したものです

卵 Allergen Facts, Symptoms, and Treatment

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卵について

タンパク質、必須ミネラル、ビタミンを提供する卵は、世界のほとんどの地域で食べられ、多くの加工食品に取り込まれている、安価で簡単に入手できる食物源です2。卵は食品の乳化剤、結合剤、凝固剤として機能するだけでなく、焼き菓子の上に塗って光沢を出すのにもよく使われます4。米国とヨーロッパでは、ほとんどの卵はニワトリのものです。しかし、ヨーロッパの一部やアジアではアヒルの卵も消費され、多くのヨーロッパ諸国ではガチョウの卵も食べられています1。鶏卵アレルギーを持つ人は、ウズラ、七面鳥、アヒル、ガチョウなどの他の動物の卵に対してもアレルギーを持つ可能性があるため、これらの種類は卵アレルギーを持つ人の大半にとって危険なものとなります5,6。卵には多くの用途と栄養価があります。日本では、小児の即時型食物アレルギーの中でもっとも多い原因食物で、食品表示法による特定原材料として表示義務のある7品目のうちの1つとして挙げられます。即時型食物アレルギーの原因食物全体のうち34.7%を占め、0歳群で新規発症した即時型食物アレルギーのうち89.0%は鶏卵によるものと報告されています12。米国では上位8つの食物アレルゲンの1つであり、乳幼児および小児では(牛乳に次いで)2番目に多い食物アレルギーです5,7。実際、世界的なデータによると、卵アレルギーは乳幼児の0.5~2.5%に影響を及ぼしています6。オーストラリアでは有病率はさらに高く、アレルギーは乳幼児の8.9%に影響を与えています6。しかし、幸いなことに、小児の約70%は16歳までにアレルギーを克服します5

卵はどのようなものに使われていますか?

アレルギーを持つ人は卵の一部、つまり卵黄または卵白に対してのみアレルギーがある場合がありますが、混入なくこの2つを完全に分離することはできません。そのため、卵アレルギーを持つ人は、卵のすべての部分に注意する必要があります5

以下の成分は卵の存在を示している可能性があり、卵アレルギーの患者さんはこれらを避ける必要があります3,4:アルブミン、アポビテリン、結合剤、コレステロールフリーの卵代替物、凝固剤、乾燥卵固形分、乾燥卵、卵、卵白、卵黄、卵液、エッグノッグ、乳化剤、脂肪代替物、グロブリン、レシチン、リベチン、リゾチーム、メレンゲパウダー、オボアルブミン、オボグロブリン、オボムチン、オボムコイド、オボトランスフェリン、オボビテリア、オボビテリン、粉末卵、シリカアルブミネート、シンプレッセ、すり身、トレイルブレイザー、ビテリン、全卵。

卵を含む可能性のある食品には以下のものがあります4:焼き菓子、ベーキングミックス、生地、ベアルネーズソース(フランス料理の伝統的なステーキソース)、ブイヨン、朝食用シリアル、ケーキ用小麦粉、キャンディ、クッキー、クリーム状のフィリング、カスタード、卵麺、エッグノッグ、フレンチトースト、オランデーズソース、アイスクリーム、レモンカード、マカロニ、麦芽入りココア飲料(オヴァルティンなど)、マシュマロ、マヨネーズ、メレンゲ、マフィン、麺類、オムレツ、パンケーキ、加工肉製品(ボローニャ、ミートローフ、ミートボール、ソーセージなど)、プディング、サラダドレッシング、シャーベット、スフレ、スープ、スイーツ(フォンダンクリーム、トリュフなど)、タルタルソース、トルコ菓子、ワッフル、ワイン。

卵タンパク質は、シャンプー、化粧品、下剤などの医薬品にも含まれている可能性があります。また、フライパンなども混入のリスクをもたらします。たとえば、レストランのフライパンで卵を焼いた場合、フライパンが適切に洗浄されないと、同じ表面で焼いたハンバーガーに卵タンパク質が含まれる可能性があります4。一部のワクチンには卵タンパク質も含まれている場合があり、卵アレルギーの患者さんにこのようなワクチンを注射すると、深刻な事象を引き起こす可能性があります10

受診の重要性について
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感作されている可能性のあるアレルゲンは他にもありますか?

卵アレルギーを持つ人の中には、無関係に見える他の食物を食べたときに症状を発症する人もいます。これは交差反応と呼ばれ、身体の免疫系が異なる物質中のタンパク質や成分を構造的に類似しているか生物学的に関連していると判断し、反応を引き起こすときに発生します2。鶏卵との交差反応をもっとも起こしやすいのは、ウズラ、七面鳥、アヒル、ガチョウ、カモメなどの他の動物の卵です。これらの卵はすべて、ほとんどの卵アレルギーの患者さんにとって安全ではありません。鶏肉が交差反応を起こすことはまれです5,6。また、Bird-egg症候群と呼ばれる病態があります。これは、鳥の飼育者が、鳥由来の抗原に経気道や経皮感作された後、鶏卵を摂取した際に即時型アレルギー症状を来す病態で、飼育する鳥の羽毛やフン、血清などに含まれる抗原(血清アルブミンなど)と鶏卵由来の抗原の交差反応に起因して発症するものです。鳥を飼育する成人に発症することが多く、小児例はまれとされています13。主な原因抗原とされている血清アルブミン(αリベチン)は、鶏卵では卵白よりも卵黄に多く含まれ、熱に不安定な性質をもつため、卵黄を十分に加熱しないまま摂取したときに誘発されやすいとされています13。また、一部の症例では、鶏肉摂取でも誘発が認められています13

 

※他に感作または交差反応を起こしうるアレルゲンは人により異なるため、自己判断せずに必ず医師の診断を受けることが必要です。

完全に卵の摂取を避ける必要がありますか?

卵はさまざまな種類のタンパク質で構成されています。すべてのタンパク質に異なる特性があり、この特性が、重度のアレルギー反応を引き起こすさまざまなリスクレベルに関連している可能性があります。アレルギーを持つ小児のほとんどは、マフィンのような焼き菓子など、十分に加熱した卵に対しては耐性を示します2が、アナフィラキシーとも呼ばれる重篤な症状を引き起こす可能性があり、あらゆる形態の卵(生卵、調理した卵、焼成した卵)を避ける必要がある患者さんもいます5。卵アレルギーを克服(耐性獲得)できない患者さんもいますが、約70%の小児は16歳までに克服しています5。個人個人のリスクプロファイルは、どのタンパク質(アレルゲンコンポーネント)に対してアレルギーがあるかによって異なります2

アレルゲンコンポーネント:オボムコイド(卵白由来)

卵白に含まれるタンパク質のひとつであるオボムコイドに対する特異的IgEを検査することができます。オボムコイドの特性は以下の通りです。

  • 卵白由来のアレルゲンコンポーネントであるオボムコイドは、加熱に強い性質を持ちます。そのため、引き起こされる症状がオボムコイドに関連している場合には、あらゆる形態の卵に対してリスクがあります。
  • オボムコイド特異的IgEの結果が高値の場合には、残念ながら耐性獲得は難しいかもしれません。
アレルギーの原因は1つではありません
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一般的な症状

卵アレルギーは軽度から重度までさまざまで、時間の経過とともに変化することがあるため、ある時には軽い症状で済んでも、別の時には症状が重くなることがあります。食物アレルギーの症状は、摂取後数分で現れる場合も数時間経ってから現れる場合もありますが、ほとんどの症状は2時間以内に現れます8。皮膚、消化管、心血管系、気道などで、以下のような症状が発生する可能性があります8,9

  • 腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、胃痙攣
  • じんましん(アレルギー性じんましん)、かゆみ、湿疹
  • ゼーゼーする、鼻づまり、息切れ、繰り返し起こる咳
  • ショック、循環虚脱
  • 喉の狭窄、渇き、嚥下困難
  • 蒼白または青色の皮膚
  • めまい、立ちくらみ、失神、微弱な脈拍
  • アナフィラキシー(生命を脅かす可能性のある事象)

特に小児では、卵アレルギーがアトピー性皮膚炎(湿疹)を引き起こすことが一般的です7。卵を実際に食べなくても、単に卵に触れただけでじんましんなどの反応が発生した例も報告されています4

自分がアレルギーかどうかを知るにはどうすればよいですか?

アレルギー症状の原因を知ることは、治療や対策への第一歩です。自己判断せず、きちんと医療機関を受診して医師による適切な診断を受ける必要がありますので、医師に相談するために症状を記録しておきましょう。症状の記録とともに、特異的IgE血液検査または皮膚プリックテストが役立ちます。アレルギーと診断された場合は、医師の指導に従ってください。

卵アレルギーを持つ小児は、アレルギーを克服(耐性獲得)し、このアレルゲンを含む食物を再び摂取できるようになる場合があることに留意しておくことが重要です。したがって、卵アレルギーの克服(耐性獲得)をするため、定期的な再検査と食物経口負荷試験を実施することが推奨されます10

重大な症状が発生するリスクはありますか?

食物アレルギー反応は予測できず、症状は局所反応から全身反応まで多岐にわたります。詳細は医師にご相談ください 11

卵は、小児に関連するすべてのアナフィラキシー症例の7~12%で誘発因子として報告されています6。さらに、ぜん息の場合は、重度の卵反応のリスクが高まる可能性があります。十分に調理された卵と比較して、生卵や十分に調理されていない卵を摂取すると、より重篤な反応が誘発される場合があります7

  1. Encyclopedia Britannica [Internet]. Chicago: Encyclopedia Britannica Inc.; 2020 Jul 23. Available from: https://www.britannica.com/topic/egg-food.
  2. EAACI, et al. Molecular allergology user’s guide. Pediatric Allergy Immunol. 2016 May;27 Suppl 23:1-250. do: 10.1111/pai.12563. PMID: 27288833. (167-168 p.) Available from: http://www.eaaci.org/documents/Molecular_Allergology-web.pdf.
  3. Kids with Food Allergies [Internet]. Arlington, VA: Asthma and Allergy Foundation of America; 2015 Feb. Available from: https://www.kidswithfoodallergies.org/egg-allergy.aspx.4. Steinman HA. Hidden allergens in foods. J Allergy Clin Immunol. 1996;98:241-50.
  4. American College of Allergy, Asthma & Immunology [Internet]. Arlington Heights, IL: American College of Allergy, Asthma & Immunology; 2014. Available from: https://acaai.org/allergies/types-allergies/food-allergy/types-food-allergy/egg-allergy.
  5. Tan JW and Joshi P. (2014), Egg allergy. J Pediatric Child Health. 50: 11-15. doi:10.1111/jpc.12408.
  6. Caubet J-C, Wang J. Current understanding of egg allergy. Pediatric clinics of North America. 2011;58(2):427-443. doi:10.1016/j.pcl.2011.02.014.
  7. American College of Allergy, Asthma & Immunology [Internet]. Arlington Heights, IL: American College of Allergy, Asthma & Immunology; 2014. Available from: https://acaai.org/allergies/types/food-allergy.
  8. Mayo Clinic [Internet]. Rochester, MN: Mayo Foundation for Medical Education and Research; 2019 Nov 2. Available from: https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/food-allergy/symptoms-causes/syc-20355095.
  9. Guidelines for the diagnosis and management of food allergy in the United States: report of the NIAID-sponsored expert panel. J Allergy Clin Immunol 2010 Dec;126(6 Suppl):S1-58..
  10. Wright BL, Walkner M, Vickery BP, Gupta RS. Clinical Management of Food Allergy. Pediatr Clin North Am. 2015 Dec;62(6):1409-24. doi: 10.1016/j.pcl.2015.07.012. Epub 2015 Sep 7. PMID: 26456440; PMCID: PMC4960977
  11. American College of Allergy, Asthma & Immunology [Internet]. Arlington Heights, IL: American College of Allergy, Asthma & Immunology; 2014. Available from: https://acaai.org/allergies/types-allergies/food-allergy/food-allergy-avoidance.
  12. 日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会・海老澤元宏・伊藤浩明・藤澤隆夫監修.食物アレルギー診療ガイドライン2021.協和企画.2021;50. 
  13. 日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会・海老澤元宏・伊藤浩明・藤澤隆夫監修.食物アレルギー診療ガイドライン2021.協和企画.2021;214.