成人の食物アレルギーの原因としてもっとも多い甲殻類、軟体類は、300種以上の食用種で構成されています1-3。アレルギー反応の大きな原因となる甲殻類には、カニ、ロブスター、ザリガニ、エビ、オキアミなどさまざまな種が含まれます1,4。一方、軟体類には、二枚貝(ムール貝、カキ、ホタテ貝、ハマグリなど)、腹足類(カサガイ、タマキビ、カタツムリなど)、頭足類(イカ、タコ、コウイカなど)の3種類があります1。甲殻類、軟体類は生でも調理しても食べられるほか、さまざまな製品が加工食品の調味料として広く使用されています2。また、甲殻類、軟体類の殻や貝殻を用いて、グルコサミン、保湿剤、カルシウムサプリメントなどの多くの製品が作られています1。甲殻類、軟体類にはタンパク質とオメガ-3脂肪酸が豊富に含まれていますが、米国では8大食物アレルゲンの1つであり、甲殻類、軟体類アレルギーは全世界の人口の約2%に影響を及ぼしています2。日本でも、甲殻類は即時型食物アレルギーの原因食物として8番目に多く、成人ではもっとも多い新規発症アレルゲンです9。エビ、カニは食品表示法による特定原材料として表示義務に、アワビ、イカは、特定原材料に準ずるものとして表示推奨品目となっています9。残念ながら、甲殻類、軟体類アレルギーは通常、生涯にわたって続き、食物誘発性アナフィラキシーの発生率がもっとも高いものの1つとなっています2,3。実際、タイ、台湾、香港やシンガポールでは、甲殻類、軟体類が成人および年長の小児におけるアナフィラキシーの主要原因となっています5。甲殻類、軟体類アレルギーは小児期に発症する場合もありますが、アレルギーの患者さんの60%は成人してから初めて関連するアレルギー反応を経験します1,3。ある種類の甲殻類、軟体類に対してアレルギーがある場合、同じ群の他の種(甲殻類や軟体類)にも反応する可能性が高いため、混入による反応の危険性が高く、魚市場や魚の調理中にはこのような混入が容易に発生します1。
甲殻類、軟体類は包装食品や加工食品の調味料として広く使用されており、貝殻や殻はグルコサミン、保湿剤、カルシウムサプリメントなど多くの製品に使用されています。アレルギーを持つ人は、甲殻類、軟体類が調理または処理されている場所に近づいただけでアレルギー症状を発症することがあります。このような症状は、エアロゾル化した甲殻類、軟体類の粒子や蒸気に反応することが原因と考えられます1。そのため、水産加工に携わる人々の間でこのような反応が報告されており、アレルギーのある人は、レストランやキッチンのような魚介類が盛んに調理されている環境にいるだけで症状を発症する可能性があります1,4。ある種類の甲殻類、軟体類に反応する人は、同じ群の他の種(甲殻類や軟体類)にも反応する可能性が高いため、混入による反応の危険性が高く、魚市場や魚の調理中にはこのような混入が容易に発生します。この危険性は、揚げ油にも及びます。たとえば、エビと同じ油でフライドポテト(チップス)を揚げた場合、この油に微量の甲殻類のタンパク質が含まれている可能性があり、それがフライドポテトに移る可能性があります1。
食品表示には、甲殻類、軟体類がそのまま表記されている場合もあれば、甲殻類、軟体類タンパク質を含む以下のいずれかとして表記されている場合もあります2。
さらに、甲殻類、軟体類は以下のような食品に含まれる場合があります1,2:ブイヤベース、クラムブロス、香辛料、カニ抽出粉末、イカ墨、ザリガニ、魚醤、魚のだし、フリットミスト、グルコサミン、ガンボ、ジャンバラヤ、ロブスター抽出粉末、ケジャリー(魚と米の料理)、ランカシャーホットポット(英国のシチュー)、カキエキス粉末、オイスターソース、パエリア、ホタテエキス粉末、魚介香味料(カニやハマグリの抽出物など)、エビ粉末、スパイス、すり身
甲殻類、軟体類アレルギーを持つ人の中には、無関係に見える他の食物を食べたときに症状を発症する人もいます。これは交差反応と呼ばれ、身体の免疫系が異なる物質中のタンパク質や成分を構造的に類似しているか生物学的に関連していると判断し、反応を引き起こすときに発生します。甲殻類、軟体類との交差反応をもっとも起こしやすいのは他の甲殻類(ロブスター、エビ、カニなど)ですが、軟体類(ホタテ、ムールガイ、カキ、イカなど)との間にも弱い交差反応が見られます。さらに、まれにイエダニや昆虫(ゴキブリなど)も交差反応を示す場合があります2。
※他に感作または交差反応を起こしうるアレルゲンは人により異なるため、自己判断せずに必ず医師の診断を受けることが必要です。
加熱処理や加圧処理は、甲殻類、軟体類のアレルゲンを破壊するのではなく、アレルギー誘発性活性を高める可能性があります。そのため、調理済みの甲殻類、軟体類は、実際には生のものよりもアレルギー誘発性が高い可能性があります2。甲殻類、軟体類と魚類は近縁種ではないため、甲殻類、軟体類にアレルギーがあるからといって、魚に対して自動的にアレルギーを持つわけではありません。とはいえ、魚介類間の混入の危険性を考えると、甲殻類、軟体類と一緒に扱われた可能性のある魚を摂取する際には注意が必要です4。
甲殻類はさまざまな種類のタンパク質で構成されています。すべてのタンパク質に異なる特性があり、この特性が症状を引き起こすさまざまなリスクに関連しています2。
甲殻類、軟体類アレルギーは軽度から重度までさまざまで、経時的に変化することがあり、その結果、症状が軽度になったり、重度になったりする場合があります。食物アレルギーの症状は、摂取後数分で現れる場合も数時間経ってから現れる場合もありますが、ほとんどの症状は2時間以内に現れます6。皮膚、消化管、心血管系、気道などで、以下のような症状が発生する可能性があります6,7。
甲殻類、軟体類アレルギーの症状には、呼吸を阻害したり、血圧を劇的に低下させたり、心拍数に影響を与える可能性のある全身反応のアナフィラキシーも含まれます。もっとも重度のアレルギー反応であるアナフィラキシーは、暴露から数分以内に発症し、死にいたる可能性もあります6。実際、特にエビアレルギーは、食物誘発性アナフィラキシーの発生率がもっとも高いものの1つであり、その割合は成人で約42%、小児では約12%です2。
アレルギーを持つ人は、甲殻類、軟体類を頻繁に調理する場所で症状が現れる場合もあります。蒸気や蒸気中の甲殻類、軟体類の粒子によって引き起こされるアレルギー反応は、通常、ぜん息、アレルギー性鼻炎、皮膚障害など、上気道や下気道で呼吸器症状を誘発します2。
アレルギー症状の原因を知ることは、治療や対策への第一歩です。自己判断せず、きちんと医療機関を受診して医師による適切な診断を受ける必要がありますので、医師に相談するために症状を記録しておきましょう。症状の記録とともに、特異的IgE血液検査または皮膚プリックテストが役立ちます。アレルギーと診断された場合は、医師の指導に従ってください。
食物アレルギー反応は予測できず、症状は局所から全身まで多岐にわたります。詳細は医師にご相談ください 8。
ぜん息の患者さんにおいては、特にぜん息の管理が不十分な場合、甲殻類、軟体類に対する重篤な反応のリスクが高まる可能性があります。さらに、ごく少量の甲殻類、軟体類にも反応した場合は、重度のアレルギーである可能性が高いと思われます1。